目の前に並ぶ数多くの玩具を眺めると、一言にディルドやローターと言っても形や大きさ色や造形にも様々なモノがあることがわかる。
『私には…選べない…。』
そう思いメールを送り返信が来る頃、男性店員が声を掛けてきた。
それまでも痛いほどに感じる他の来店客の視線を遮るようにその間に立ち、恥ずかしい商品を扱う店でありながら、どこか常識を感じるような態度に少し安堵の感情を抱いた。
「あっ…あの…。ちょっとよくわからなくて…。どれが良いのか…。」
顔を赤く染めながら俯いて答える私に、色々と説明を試みる男性店員ではあったが、言われている説明内容を聞いてもピンと来るほどに目の前の霧は晴れずに尚更に戸惑いを生み出してしまう…。
「機能とか…使い方…それも良くわからなくて…。
大きさ…ですか…?
いまいち…よくわからない…ですね…。他の女性は…どんなものを…。あっ…女性は…あまり来ませんよね…?」
自分の言ったことと、今の状況に急に恥ずかしさが込み上げ、更に顔を赤く染めて俯いてしまう。
「いえ…そんな事はありませんよ?男女問わず欲望はありますからね…男性は比較的オープンですが女性は概ね秘められた方が多くいらっしゃいますが、それでもご来店なさるからは多くいらっしゃいますから…。」
私を気遣ってか男性店員は他にも女性客が来ると話してくれる。
それでも私が感じる恥ずかしさに変わりはなく、選べない状況も続く。
『ディルドの大きさを決めて…。』
『あまり大きなモノは…。』
男性店員とメールの男性の言葉が脳内に渦巻き、決めかねてはいるものの、玩具のコーナーに案内された瞬間に視界に飛び込んできたディルドに意識を奪われていた。
目立つ場所にディスプレイされたそれは、他よりもより妖しげな照明が当てられ、より魅力的に見えるように飾られていた。
反り返った塊は想像する男性のそれよりもかなり大きくみえる。
先端は大きく膨らみ全体には血管が浮き立つような巧妙な造り。
おそらくそこまでパーフェクトなモノなど存在しないのだろうと思うそれは、理想とされる大きさと形を再現しているのではないだろうか…。
それでもメールの男性も、この店の男性店員も、先程より大きさに拘っているように思える。
大きさ…それはそんなに重要な事なのかすら分からない。
無知な私にとって大きすぎるモノはダメなのか…。
小さめのモノから使わなければならないのか…。
それすらも理解するための物差しを持ち合わせていたい私は…。
「あの…アソコの玩具なんですが…。」
最初から興味を示していた玩具を控えめに指さして…。
「あれは…大きすぎるんですか…?」
使う者によって好みの大きさは変わるという事は少しだけ理解できた。
しかし使ったことのない私は、やはりリアルな造形とあり得ないほどの存在感に惹かれてしまった…。
「私には…無理なんでしょうか…。」
申し訳なさそうに小さな声で、問いかけとも独り言ともとれるような言葉を呟いた…。
【こんばんは…。遅くなりました。】
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