必要最低限の会話で始まり、終わる、そんな日々。
別に離婚するほど仲が悪いわけでもないし、妻はちゃんと食事を作ってくれる。
言った時間には帰ってくるし、こちらも必要以上に疑わない。
一時期は子作りに励んだこともあった。
しかし恵まれることはなかった…、どちらかに原因があったのかもしれない。
体質的な物もあったのかもしれない…しかし、追及することなく…それ以上必死になることは止めた。
「ふぅ…。」
何時からこうなったのか…。
そんなことを考えながら少しため息を漏らした矢先、不意打つようにインターホンが鳴る。
反射的に身体が跳ねるが、こんな朝からやってくる客と言えば一人しかいない。
数秒前についたため息はどこへやら、少し気持ちに乗りを感じながらモニターを覗けば、やはり…。
「今日は随分早いじゃないか…。」
冷え切った妻との関係も、この少女のおかげで何とか保っていられる。
そう思えるほど、在宅勤務も多く人と関わることがめっきり減った男にとっては、言い過ぎではなく女神だった。
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「相変わらず勉強熱心で偉いな、真生ちゃんは…。」
好きに見ていいよ…そう言ってから来訪の頻度は上がり、そのたびに何かしらの本を棚から引き抜いては持ってくる。
そんな勤勉な様子…好奇心旺盛なところはもはや見習うべきか…と思うほどに感心しながらも。
「っ…。」
その分、羞恥心…や性的な倫理観が欠落しているのか…とにかく無防備。
そんなところが、彼女を女神と…呼びたくもな所以なのだが…。
触りたい…触りたい…触りたい…。
まだ幼かった真生を偶然助けたころには感じることのなかった感情が、彼女の成長に合わせて歪んだ欲求も成長させたような気がする。
「そうそう…そこはそう言う解釈で合っているよ…偉いじゃないか…。」
自分なりの理解…考えを持って学ぼうとするその姿勢にほとほと感心しながら、そっと真生の髪を撫でる。
サラッとした、年齢特有のきめ細やかな毛先…。
撫でる指先が抵抗なくサラッと滑り落ちるのを感じるほどに。
ずっと触っていたくなるような触り心地…そして、年頃の少女特有の汗のにおいとシャンプーの香りが混ざった甘酸っぱい匂い。
化粧っ気のなさが、幼さを際立たせ、背徳感をくすぐってくる。
今日も今日とて、いつもと同じ少し刺激的な日常を過ごすだけのはずだった、しかし男は、ある卑劣な罠を仕掛けていた。
「奉仕と女の礼儀」
一見、一般紙のようにも見えなくもないその背表紙に描かれたタイトル。
いつも少し鮮やかな色の背表紙を好んで持ってくる真生、そしてそのジャンルが多岐にわたることを知れば、選択肢の中に入るかもしれないと仕入れた一冊だった。
中には口淫を中心として、男の悦ばせ方という物が最もらしく解説されており、好奇心旺盛、勤勉な真生にもちょうどよい一冊になっていると考えていた。
「他に気になる本はないかい…?
新しい本は、2段目の棚に並べているからね…?」
もちろん、ダイレクトにその本を推すわけにもいかず、それとなくの誘導。
最近の中では感じたこともないほどの緊張を心に感じながら、真生の動向を見守る。
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