誠司さん(夫)
「響子、帰ったよ!この人が山本さんだ、」
響子
「貴方、お帰りなさい、初めまして山本さん、響子です」
山本
「こんばんは、今日はすいませんねえ・・・新婚宅にお邪魔して・・・」
社交辞令の挨拶を交わして、頭を上げて私と山本は驚いた・・・。
まさに、最後の捜査で捕り逃したレイプ犯が目の前に立っているのだ。
何も知らないのは、誠司さんだけ・・・。
私は全身の血が、逆流する様な感覚を覚えた。
しかし、他人の空似かも・・・。
そう切り替えて、平静を装っていた。
誠司さん
「どうしたんだ?・・・響子?・・・大丈夫か?・・・」
響子
「え?・・・ええ、ごめんなさい・・・さあ、どうぞ・・・」
私は誠司さんと、山本をリビングに通してしまう・・・。
誠司さん
「山本さん、今日はゆっくりして行ってください、響子ビール頼むよ・・・」
山本
「そんなに気を使うなよ、逢わせてくれって頼んだのはこっちだからな
手料理ご馳走になったら退散するよ・・・」
そこに、私はビールと枝豆を持って入って来る・・・。
山本の目が、私の全身を這い回る様な感覚を感じる。
響子
(やはり・・・この男、あの男に間違い無い・・・)
お酒に余り強く無い誠司さんは、ビールを少し酌み交わすと・・・。
誠司さん
「ちょっとトイレに行って来るよ・・・」
そう言って、早々に席を立つ・・・。
山本と二人きりになってしまう・・・。
山本
「久しぶりですね。刑事さん・・・」
響子
「や、やっぱり・・・あの時の・・・今なら見逃してあげる・・・
もう、帰って!・・・」
山本
「良いんですか?そんな無下な態度・・・潜入調査中の動画もあるんだけどなあ・・・
あいつに見せたらどんな風になるかなあ・・・」
山本は、人の懐に入り込むのは、常套手段・・・動画の件もハッタリである。
しかし、不覚にも私には撮られた記憶は無いが、誠司さんに過去の自分を知られる・・・
そう考えただけで、怯んでしまった・・・。
もう、守る物があるから、隙が出来てしまっていたのだ。
響子
「ち、ちょっと待って!・・・誠司さんには言わないで・・・」
私は言ってはいけない言葉を口走ってしまった・・・。
山本
「あの気丈な、女刑事が・・・レイプ犯にお願いか?・・・
じゃあ、取引としようか?・・・あんたが穏便にしたいと言うなら、俺の指示に従えるか?
まずは、ゆっくり話したいもんだね・・・誠司に酒を飲ませて・・・
いや、これが良いか・・・これを混ぜて飲ませろ・・・朝までは起きられない睡眠薬だ。
まずは、そんな事が出来るか、確かめさせて貰うぜ」
山本は白い粉を、私に持たせてそう言った・・・。
この男・・・最初からそのつもりで・・・。
いつも、こうして犯行を重ねているのだろう・・・私は直感した。
そんなタイミングで、誠司さんが戻って来た。
※元投稿はこちら >>