距離こそ少しあるが、遠目にしおり…そしてみほの存在が確認できた。
しおりは極度の緊張感から解放されたことでどっと疲れが出たのか、みほの膝の上で眠っているように見える。
-そうだよね…、大人顔負けの体つき…あの柔らかさ…。
でも、君はまだ…しおりちゃん…君はまだ子どもなんだ…、当然か…。-
その様子に思わず先ほどまでの情事を思い返し、口元が緩む。
そんなしおりを宥めるように…、落ち着かせるようにそっと髪を撫でながら微笑むみほ。
しかしその表情とは裏腹に、少しの手の震えが見て取れる。
-君も馬鹿じゃない…。
しおりちゃんがそこまでになっている理由を絶対に考えるよね…。
だって、下着を着けてないんだから…、そしてそんなに疲れ果てるまでのことがあったんだ…、ただ事じゃないことは確実にわかるはず…。-
そんな思いを巡らせていると、何かを探すようにスカートポケットに手を入れるみほ。
多少の運要素はあったが、想定したとおり例の物がみほの手に渡ることに成功する。
中身を確認した瞬間、みほの表情は一変。
驚き…、恐怖…、動揺…、あらゆる負の感情が溢れ出したかのように、かたかたと手紙を握った手が震えているのがわかった。
-理解したかな…?
彼女がそうなっているわけを…。
全部君だよ、みほちゃん…。君を守るために彼女はそうなったんだ…。
わかるかな…?「君の所為」なんだよ…。-
脳内では、フードコートでの出来事が蘇る。
知らない男の視線…それが自らの下半身に…スカートの中へと突き刺さり…その様子が撮影されたこと。
そして、その時に感じてしまった感じたことのない…高揚感…、指示されてもいないのに自然とスカートを捲ってしまった…あの背徳感を。
それを意識してしまった最後…、届きはずのない視線が、突き刺さるように感じ始める。
男は確かに見ている…少し離れた距離で。
男は確かに見ている…その緩んだ口元で。
男は確かに見ている…確かな興奮の眼差しで。
「ねぇ…貴女…大丈夫?顔色が悪いようだけど…。」
確認もできない視線に震えながら、気が気ではないほどの緊張感を感じながらも、
不意に声をかける高齢の女性の存在には気づかなかった。
「お父さんや…お母さんは…?誰かいないのかい…?」
膝の上で眠る、涙が流れた跡が残る少女。
紙切れを一枚握りしめてカタカタと震える少女。
最初で最後の、本当の助け…しかし…。
『だ、大丈夫です…すいません。ちょっと友達が体調悪いみたいで、少し休んで、その、帰ろうと思ってるので…ありがとうございます。』
そう頭を下げれば、女性は無理しないでね、優しい言葉をかけて去っていった。
人通りは少ない奥のエリアとはいえ、通行人はいる。
男の顔がぼんやりとした記憶の中にしか残っていないみほは、その通行に全てが男の視線のように感じ始めてしまう。
笑みを浮かべる男。
少し声を荒げる男。
大柄な男。
ほんの一瞬、みほに向けただけの視線でも…体は過敏に反応し、震えが止まらない。
これだけ必死になったしおりのあられもない姿。
一瞬で意識を刈り取られ、自らの手であっさりと下半身を許しそうになる自分が逆の立場だったらどうなるのだろうか…。
ちゃんとしおりの下へ帰ってこれたのだろうか…。
不安だけが募り…積み重なっていく。
そして再び目に飛び込んでくる。文面。
「君の為に…、しおりちゃんは…壊れちゃった…。
また会えるさ…。
心も身体もずたずたになったしおりちゃんに…まだ助けてって…言えるなら…。」
【お返事遅くなりました。
イメージに近い描写になっていますでしょうか…。
直接的なアプローチができないぶん、少し都合の良い書き方をしてしまっていますが…。
あいかわらず、貴女の描写はいろいろと掻きたてられるものが、ありますね…。
緊張と…興奮と…。】
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