【ありがとうございます。
良い意味で期待通りの展開を裏切れたらいいなとは思っています。
ベースは貴女の希望に添う形でもちろん話を描いていこうとは思いますが、それだけだとただネタバレしたストーリーをなぞるだけになってしまいますから。
そう言う意味では、「どのルートを選んでも安息はない」、これもどうしようかなって思うくらいです。
たとえ悲しい救われないバッドエンディングが10本あったとしても、その内1本くらいは展開次第でハッピーエンド…そうなっても良いかなとは思っています。
選択式のゲームではありませんが、貴女の下で描かれる二人の行動次第ではそう言う分岐もあっていい。
そう思っていますから。】
美穂を煽りに煽って返事は聞かず一方的に通話を終了する。
詩織と違い、美穂の部屋を覗くためのツールは存在しない、しかし、今の美穂の心情…心境はある程度想像もつく。
きっと美穂はどっちかを選ぶなんてことを考えてはいないのだろう。
言い過ぎではなく、今の美穂にとっては意味合いは違えど、詩織と男の両方が重要で大事な存在になっている。
それ自体はおかしくは感じない…かもしれない。
何年来の付き合いの詩織と接触こそ数回の男が、同じ土俵に並んでいる違和感を度外視するのであれば…。
美穂が男の言葉通り自慰に耽ったかどうかまでは想像でしかない。
しかし、男の推測は大凡ズレてはいないだろう。
次のターニングポイントになりそうなのは、裏切ったのは…どっちなのか…。
美穂が詩織を裏切ったのか…、詩織が美穂を裏切ったのか…。
男の口八丁手八丁でどうにでも塗り替え可能なこの事実。
どちらにすることが、より二人を壊せるのか…、あいかわらず震えるような興奮を与えてくれる少女に男は笑みが止まらず、ジワリと高ぶりを示すように汗が額に滲む。
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大凡同刻
メッセージを返した後の詩織も不安定になっていた。
二人共々、あれだけ数時間前は満たされた表情をしていたはずなのに…。
喜びに満ち溢れた美穂、強気な姿勢を取り戻した詩織、にもかかわらず男の言葉一つで容易に精神は犯され、本質が見えなくなる。
いや、見えたと思っていた本質のようなもの…さえ、男が用意したまやかしかもしれない。
美穂の動揺以上に、詩織の心は揺れているようだった。
混乱…暴走…、なまじ経験そのものや知識が存在しているだけに、美穂にとっては夢幻でしかないものを詩織はより具体的に想像できてしまうことが原因だろう。
挿入行為の先にある妊娠という、具体的且つ最も大きなリスク。
そう、美穂は快感というもので止まってしまうが、詩織はそうではない。
その先に何があるかを想像する知識、知恵を持っている。
そして妊娠という言葉を思い描けば描くほど、
美穂への裏切り、年齢にそぐわぬ行為における社会的な死、親族友人知人の信用信頼の失墜、自身の身体への負担…変化…。
知らぬが仏…とはよく言ったもの、知っていることで地獄が見えてしまう恐怖。
どれだけ自分が軽はずみな言動で大人を、男を煽ってしまったのか、心の底から後悔させる追い打ち。
今の詩織に取ってみれば、男に犯される事、好きに身体を弄ばれる事「自体」にはもうそこまでの恐怖を感じていないのかもしれない。
最悪が起こった時…そしてその先に自分に降りかかるかもしれない未来に怯える。
齢十数歳という年齢はそれをプラスに変換させるだけの知恵を持ち合わせてはいない。
さらに追い打つように男が言い放った「ナイフでも持ってくるかい?」
この言葉…もし、男が身体に傷がつく可能性すらも考慮した上で、詩織に会うことを考えているのなら。
もはや、詩織程度の殺意など、ライオンを目の前に退路を断たれたウサギのようなもの。
逃げ道はない、真っ向勝負で太刀打ちできない。
そんな状況にもなれば…。
「そう…なるよねぇ…。ふふっ。」
胃液が食道を駆け上がり、逆流してくるような感覚。
より色濃く、鮮明に想像できてしまえば、嘔吐感を催すことも往々にしてあるだろう。
しかし…、もしそれが…取り除かれた時…。
彼女はどうなってしまうのだろう…。
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「ふぅ…。
良い時間か…、着ているかな…?」
手元の時計が午前8時を示す頃、黒塗りのバンで詩織の待つ駅のロータリーへとやってくる。
平日こそ通勤通学の人通りの多い駅だが、日曜日の早朝ともなれば人通りはまだないに等しい。
ぱんつを履いてくるな…。
そう告げたことに対しての返事はなかったが、まず従わない子ではないことはないことはわかってる。
しかし、スカート姿のその様子が目に入れば、普段からスカートスタイルなだけに、今日に限ってパンツをはいてくるなどということが許されなかったのだろう…。
時折そよぐ風にあおられるスカートの裾を、きゅっと抑えながら佇む詩織の前に車を滑り込ませる。
助手席の窓まで遮光シールが貼られ、明るいこの時間でさえ、至近距離でなければ中の様子は見えないほどの怪しさ。
「お待たせ、自分でドアを開けて乗っておいで。」
男は車から降りることもせず、助手席のドアを開けることもせず徹底していた。
仮に人目があったとしても、詩織が自ら乗り込んでいる、この事実だけは確実にしたいかのように。
デニムにロンTとジャケット。
詩織も記憶にあるあの時の恰好だった。
「さぁ…今日はどこへ行こうか…。
久しぶりだね…顔を見るのは…、元気にしていたかい…?」
ゆっくりと滑り出すその車の速度に合わせて、男は声をかける。
視線は前を向いたまま、大きな車に似合わぬ、発育がいいとはいえ、まだ十数歳の少女。
深く腰をかければ、目元から下くらいは完全に扉に隠れ外からは見えない。
「先に、約束がちゃんと守れているか確認しようか…。
守れていたら…おじさんと詩織ちゃんのデートのスタートだ。」
みるみる市街地を離れ、詩織の大凡見当もつかない地域へと入っていく。
そんな中での男の言葉、約束を守っているかの確認。
それは、まずスカートを捲って下着がないことを見せろ…そう言いたげ。
詩織の長い長い日曜日が始まった。
「おはよう…。目を覚ましたら返事をくれるかな…。」
ポケットに入れたままで、指先がスマホの画面を数回タップする。
【何度かキーワードになりつつある、中出し、妊娠の件に関してですが、どのようにお考えでしょうか。
中出し…はともかく、妊娠という事実は、起こるものを求めていますか…?
それとも、その恐怖におびえながらの詩織ちゃんに興奮を感じますか…?
そこは確認が必要かな、と思っておりました。
それと、冒頭でも、本文中でも書きましたが、「うそつき」、これはどちらがどちらに対して口にする言葉なのか…。
今は保留にしていただける方がいいかなと思っています。
イメージの共有は頂いていますので、そう言うシーンになる流れはおそらく訪れます。
その時に、その言葉を口にするのは、美穂なのか詩織なのか…、その感覚を貴女の中でもおだてていただければと思います。】
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