【括弧話がないのも珍しいですね?でもそれだけにおじさんのしおりに対する冷酷さが出てて、ものすごく怖く、これからの事にゾクゾクしてます。】
『な…なにこの声…みほ?』
(ノイズ混じりながら、それがみほだとしおりは確信します。こんな喘ぎ方、よほど快楽に頭を塗りつぶされない限り出さない…あの日から大なり小なりで何度も交わってきたふたり。お互いの部屋、学校のトイレ、通学路で別れる場所の角の公園…なのにみほは、こんなよがり方はした事ありませんでした…)
『なに…うそ…じゃあみほは…あたしじゃ…あたしじゃなくても…いいってこと?
好きだよ、愛してるって何度も何度も何度も何度も言ってくれたのに…適当に嘘ついてごまかして…気持ちいいふり…してたの?あの日…あたしの気持ちに応えてくれたって思ってたのは…あたしだけ?』
(壁にもたれて座るようにベッドに置かれたくまくん。その目は部屋全体を見ています。おそらく一日中考え抜いてメールしたのでしょう。帰宅してすぐランドセルも下ろさず帽子も被ったままでへたり込むしおり。
…大柄な小学生の女の子。こうしてみるとまだ子供だと思い返されます。しかし、その握りしめている携帯の中での会話は、もはや大人のそれ。みほは好奇心で快楽の沼に沈みました。深い思慮はそこまでなく…ですがこの子は、片想い時代を合わせると相当な想いの逡巡を繰り返しています。様々な選択肢を考え妄想し…純粋な『すき』では処理できないまでによじれ拗れているのです)
『やっぱり…この人だった…んだ。みほをたぶらかしてあたしから奪って…中身を書き換えて…あたしを…中嶋詩織を…あの子から消した…抜いたんだ…
おそらく…みほは…もうあたしを…あたしを…』
(口にすれば最後の、まるで呪いの言葉。みほからしおりへの愛してるという気持ちは、何も変わっていません。それはしおりも感じてるはずなのに…たった数秒の音声ファイル。それがしおりの心をぐちゃぐちゃにかき混ぜ始めました。帽子に隠れて見えない表情、肩をすくめて項垂れて…言葉を紡げない時間が続きますが、そのしおりの肩が震え出します)
『あは…ふふふ…そうだよね?
…くまくん、きいて?あたし…きみのご主人様に…騙されちゃってたみたい…気持ちいい事覚えて…もっともっとって…あたしに黙って先にいっちゃって…よりによってあんな奴と連絡とって繋がって…あたしの知らないところで何度も…
くまくんもきいたよね?ごしゅじんのものすごくえっちな声…あたしじゃ怖くて踏み込めない位のとこまで…いってる…狂ってるくらいに…身体中…えっちに染められてるよ?
…それなら、あの時のみほの獰猛さも…わかるよ…あの血走った目も…理解できるわ…
可愛らしくて…純粋で…包み込んでくれる優しさがあって…天然でおっちょこちょいで…笑うとものすごく柔らかい…
あたしの大好きな…愛してるみほは…もういない…
…あたしは…もうみほには…ひ…ひつ…必要…必要ないんだ…
こんな事なら…告白…しなきゃよかった…
キスしなければよかった…
みほの全部…もらわなきゃ…よかった…な…』
(言ってしまいました。相変わらず俯いたまま、悲壮な雰囲気がカメラ越しにも伝わります。たかだか12歳の女子が纏う気配ではありません。
肩がひく…ひく…と。おそらく泣いているのでしょう。もうみほは自分のみほでなくなった…
しおりは聡い子です。あのみほの喘ぎ。たったそれだけで、おじさんの作った疑念の渦にまんまと飲み込まれました。とうとうみほに続きしおりさえも、おじさんの掌に乗ってしまったのです。
涙で濡れた携帯画面。しおりはそのままで操作しています)
[すみませんでした。あたしが思い上がってました。
それでも、あたしはみほがいいんです。あの子じゃなきゃ生きて行けない。
誰にも言いませんから、会ってください。お願いします。日曜しか時間…作れないから…その代わり、場所はどこでもいいです。なので…おねがい…会って?
何をしたらみほを返してくれるの?どうか…教えてください…今度こそ…なんでも…します]
(送信し終わる…ランドセルを下ろして帽子をぬぎ…子供から大人に変わるように、しおりのまとう気配が暗く黒く変わっていきます。そのまま音もなく立ち上がり…ここじゃないどこか遠くを見つめながら笑って…)
『…ころしてやる…ぐちゃぐちゃになるまで刺して刺して…その薄汚い中身を全部掻き出してやるから…
あたしだけのみほに…手を出した罰は…うけてもらうからね…
みほにも…おしおき…しなきゃ…ね』
(殺気がドロドロに拗れます。その一部はみほにも向いてしまいました。冷たく冷たく笑うしおり。ですが、その罰もおしおきも…自分の身に降りかかることになろうとは…この時のしおりには考えもしてませんでした)
【ほんとはね?みほちゃんの声をきいて、オナニーさせちゃおうとおもってたんです。でもダメでした。ショックからそれを殺意に変える時間が速すぎて…
みほちゃんとの喧嘩を先にさせようか、おじさんに心身ともに今度こそ本当にめちゃくちゃにされるのを先にしようか…それによって、自暴自棄になっておじさんに噛みついて返り討ちにあうか、まだ縋ることのできる一筋の希望の糸に縋るようにおじさんに会って、その糸を切られるか…
描いてみて、大輔さんなら後者だって…わかっちゃった…
お話のこと。ゴールという予定調和があるだけで、そこに至る道は無数にあります。事前にお話しした通りに進むのだとしたら、完全にわたしの独りよがりになっているということ。都度相談が必要な展開だということは、それはあなたの意思も介在してくれていると言う事です。嬉しいなぁ…】
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