「話がしたい…か…。そんな余裕…、あるのかな…?」
知らない連絡先からのメッセージ。
しかし、送り主はわかっていた。
何より、そのメッセージを送っている瞬間をリアルタイムで見ていたのだから。
女性特有の体内メカニズム、どうやらみほはまだらしい徐々に身体が成熟し始めれば現れる兆候…生理。
その状況さえも、プレゼントとして渡されたぬいぐるみを介して筒抜けのしおりの生活。
そんな生活の中で、先ほど届いたメッセージも送られてきていた。
手紙の存在にようやっと気づき、生理の苦痛に表情を歪ませながらもさらなる精神的な不安、恐怖で脂汗を滲ませるそんな表情を目にしたときも…、偶然、PCの前でその様子を眺めていた。
みほが上手く渡してくれた…事は間違いないが、その「みほからのプレゼント」が、しおりにとって如何に重要な物なのかは、部屋に置かれてからの数日で本当によくわかる。
よく、祖父母や両親が、娘孫に対して目に入れても痛くない存在だ…とは言われるが、しおりにとってのみほはそれに近いのかもしれない。
愛おしく…そして、誰にも渡したくない。
そんな、言葉で表すの難しく追いつかないほどの特別な存在なのだろう。
皮肉にもそのおかげで、しおりの家族や友人にはもちろん、みほにも…そして、自分さえも気づいていないしおりを晒すことになり、文字通り内も外も丸裸のような状態になっているわけだが。
最近の男の興奮の材料、射精のおかずになる要素は専ら、みほとしおりの二人である。
しかし、ただみほのあられもない姿、あるいはトイレの時のような直接的な刺激に興奮を覚えるわけではなかった。
互いの想いで内心が乱れに乱れ…、本心を曝け出しながら…時折、好意というものはいったい何をさすのかわからなくなるほどの錯乱状態に陥っている様子。
あるいは、必死に自らに繋ぎとめるために、理性を欠いてしまいそうになる様子。
そう…精神的に壊れていく様子が…何よりも快感だった。
メッセージを送ってきた時のしおり…その震える手…少し青ざめた表情。
送信ボタンをタップするのに、かなりの勇気を使ったことだろう。
押した後の間…、少し力が抜けたようにへたれこむ様子もまた滑稽であり、必死さが伺え、堪らない興奮を覚える。
そして、ゆっくりと返すメッセージを作り始めた。
『随分遅かったじゃないか…。
したいのは話…だけでいいのかな…?
警察か…連絡されるのは困るなぁ…おじさんとしても…。
でも…、困るのはおじさんだけ…かな…?』
気丈に振る舞って見せるしおりに、容赦のない言葉を浴びせていく。
『約束通り…、あの日…いや、あれ以来ずっと、私からみほちゃんへアプローチはしていない。
約束したからねぇ…。
でも、しおりちゃん…。
君は約束を破った…、私には何をしても良いからみほには手を出すな…と。
結局、嘘じゃないか…、何とかあの場から逃げ果せたから、もういいや…終わった…って勝手に思ってたんじゃないか…?
だから遅れた…、忘れてた…なんてことはないだろう?
ねぇ…君…本当にみほちゃんのことが好きなのかい…?
その割には…、やっぱり遅いよねぇ…違和感に…気づくのがさ…。
みほちゃんがわざわざ髪を切らなきゃ気づかなかったかい…?
痣の形…変わってたのに気づかなかったかい…?
同じようにつけ合ったはずなのに…、互いの痣の濃さが違うことに…気づかなかったかい…?
ねぇ…君…本当に何が何でもみほちゃんを守るって…本当に思っているのかい…?』
わざとらしく似たフレーズを使って揺さぶるような言動を投げつけていく。
しおりのみほへの気持ちは、言うまでもない。
ぬいぐるみとの対話の様子を見ながら、それが本物だということは理解していた。
だからこそ…男は、揺さぶりをかける…。
『言葉を間違えないことだ。
いいかい…?
おじさんが、君に「会ってあげるだけ」なんだよ…。
わかるかな…?
今となっては…、君に会うメリットなんて…そんなにないんだよね…その意味…わかるかな…?』
数回に分けてメッセージを返す。
そしてそのメッセージの中には、会うことを確約する返事は含まれていなかった。
自分が会いたいと言えば、男は動くはずだ…しおりはそう思っているかもしれない。
警察…と言う単語を出せば、男は下手なことはしないはずだ、とも。
そして、みほの時同様…少しの添付ファイルをつける。
『あっみゅ…ちゅばっ!れろれろぉ…くちゅくちゅくちゅ…きもちいい…お口も…おまんこも…いいよぉ…いまなら…どこさわっても…イキそ…な…の…』
みほとのビデオ通話の一部、音声だけを抜き出し、添付した。
あえて、みほが自分の名を呼ぶシーンでもなければ、この後に続くおじさんという表現も切り抜いた。
音声だけ…それが余計にどういう状況なのかをぼんやりとさせ、しおりの心だけを揺さぶる形。
少しの雑音を混ぜることで…おそらくみほの声だ…しかし、絶対ではない…そんなオブラートをあえて施しながら。
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