通常の診察業務は、妻の容態を見ながら行う形をとっている。
可能な限りの患者には事情を説明し、他院への紹介状を渡す形で移ってもらえるように頭を下げた。
人生の半分以上を独身で過ごしてきたことがここへきて幸いか、
診察の数を最低限に抑えても、生活に何の支障も出ないほどの貯蓄がある。
極端に言えば、このままリタイアしても何の問題もない。
この先、娘の佳奈がどんな進路に進もうとも苦労させないだけの貯蓄。
しかし、規模をどれだけ縮小させても医院を閉める選択だけはありえなかった。
長い付き合いの患者がいる、というのは表向きだが
医者の立場として、妻を家以外の場所に隔離する術、薬剤を気軽に補充できる術を残しておきたいのが本来の理由だった。
理解のある看護師を一人だけ残し、今までと同じ給料を支払うことを約束し必要な時だけ動いてもらう誓約書も書かせてある。
「何にも…問題はない…。」
看護師から送られてくる妻の容態が細かく記載されたカルテのデータ。
定期的に点滴で生きることに必要な最低限のエネルギーを送り込んでいるため、死に至ることはない。
体を蝕んでいる薬剤の解毒薬も常に使用できるように保管している。
何かあれば、元に戻せばいい。
そんな、健常者が耳にすれば虫唾が走るほどの卑劣で、醜悪な目論見。
しかし寝たきりの当人はこの事実を知らない。
意識が戻らなくなる前夜でさえ、幸せそうな笑みを浮かべていた。
それどころか、悦びを取り戻したように求めてすらいたのだから。
そんなこれまでを少し振り返っているところで、目を覚ました佳奈が声をかけてくる。
作業中のPCをぱたりと畳んで、ソファに掛ける佳奈の方に目をやると、違和感、異変…に不安そうになっている言葉が聞こえる。
「起きたのか…。体調はどうだい…?
おかしいなんてことはないさ…。
ママが倒れちゃって身体がびっくりしたんだろう…。
まだ昨日の今日だからね…。
佳奈ちゃんが思っている以上に、まだ心と体ついてきていないのだろう…。
心配することはないよ…、父さんもしばらくは家にいるつもりだ。
佳奈ちゃんも落ち着くまでは家でゆっくりしていなさい。」
にこりと微笑みながら、そう告げる。
身体が熱くなったこと、睡魔が襲ってきたこと…夢でうなされたこと…
整理のつかない、夢か現かわからないまま戸惑う佳奈の横にそっと腰を下ろして肩を抱く。
「大丈夫だよ…ちょっと体がびっくりしただけだと思う…。
ごめんね…恥ずかしいかもしれないけど…、背中までびっしょりだったから…。
着替えさせてあげたかったんだけど…、佳奈ちゃんの部屋に勝手に入るのも…、良くないと思ってね。」
ソファに座る佳奈の視線の先…カーペットには、リビングには似つかわしくないバスタオルが敷かれていた。
加えて今の言葉…、そしてブランケットでくるまれた佳奈の身体は、一糸纏わぬ状態になっていた。
何一つ真実のない、偽りの言葉だったが、それは暗に佳奈が寝小便をしてしまったかのように聞こえる。
微かに漂う、アンモニア臭。少し生々しい香りも漂っている。
事実はただ、意識を朦朧とさせながら快感だけを求める状態だった佳奈を全裸に引ん槌き、
その幼い身体にむしゃぶりつき…、果てる際に溢れ出したもののシミ…。
強い快感…強い睡魔…。
意識が混濁する中、逝き狂いの中で失神するように眠りに落ちた佳奈を、ただただブランケットで包み、ごまかしの解熱シートを額に張り付けただけだというのに。
【うーん…。
書き終えてから…、ちょっと強引だったかなぁ…。
反省です。
ただ、消して書き直すのもなぁ…。
佳奈さんのイメージとそれてたら、ごめんなさい;】
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