「すぅ…、すぅ…。」
安物の錆びついた鉄骨が剥き出しになったベッドの上。横になって、寝息を立てるリズベット。
ガチャガチャ…、ギィィ…。
地下に響く音によって、深い眠りの底からゆっくりと意識が引き上げられた。
「…ん……。」
目を開けると、薄暗く、分厚くて圧迫感のある鉄板の天井が一番に目に入る。
窓もないこの地下では、今が朝なのか、昼なのか…、はたまたまだ日を跨いでいないのか、それすらもわからない。
頭が重いし、身体も重い。
昨日のダーウェルの尋問により、慣れないストレスによって心身が疲れていた。
おそらくアリスのものであろう、廊下に響く靴音を聞きながら、ぼうっと天井を意味もなく見つめる。
「おはようございます、リズベット様。」
シオンの声、フリフリしている可愛らしい尻尾。ドレスや肌着を手に持つ彼女はなんだかいつも嬉しそうだった。従者が増えても、朝の役目だけは誰にも譲らなかった。ずーっと何年も2人で朝の時間を過ごしてきた。
「おはよう、シオン。」
差し込む朝の日差し、鳥の囀り…、なんだかこれらは遠い昔のようにすら感じる。
ゆっくり身体を起こすと、目の前にあるのは冷たい石壁。
剥き出しの石床と頑丈な鉄格子、そして冷たく見下ろす憲兵団の彼女。
「……おはよう、ございます…。」
目が合い、反射的に挨拶をしてしまう。
アリスは返答することなく、床に朝食の乗った盆を置いた。
硬そうなパン…、チーズの一欠片、コップ一杯の水。朝メシ、という言葉でようやく時間がなんとなくわかった。
無言のまま、今日の朝食を眺める。
昨日まではこうではなかった。
温かいコーンスープ、焼きたての柔らかいホクホクのパン。香ばしく焼かれたベーコンやパリパリのソーセージ、庭で採れた新鮮なサラダ…、いくつもの料理が並んでいて、できるだけ従者みんなで一緒に食べるようにしていた。
「リズベット様っ、お紅茶のおかわりはいかがですかっ」
時折紅茶のおかわりをいただいて、
「リズベット様、本日は城下町の視察の予定がございます。午後は物資の搬入がございますので、屋敷内がせわしくなりますが、ご容赦ください」
今日がなんの日なのか、誰が来るのか、どこに行けばいいのか、予定を教えてもらって、使用人たちと世間話もしながら…。
それが今となっては、全裸で、小さなパンに齧り付いている。
噛み切るだけでも一苦労で、何度も咀嚼しても、なかなか小さくならない。飲み込もうとすると、喉に引っかかり、慌てて水で無理やり流し込んだ。
アリスが桶を覗き込み、露骨に舌打ちをした。
ピクッと小さく震えて、目を逸らした。
アレには昨夜の汚水が入っている…。
「…すみません…。」
トイレとして与えられた物なのだから、悪いことはしていない。桶を持ち上げるアリスを見て、顔を伏せた。
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