当然シオンはアルの部屋に行き、ドアの前で怒鳴りつける。
リズベットは商人のプライバシーも尊重しており、それぞれの部屋には鍵をかけさせていた。
それが仇となり、アルの逃亡を助けてしまった。
返答がないことから、シオンは無理やりドアを蹴破ったが、すでに窓から逃走した後であった…。
(くそっ、くそくそくそっ!!あのクソ猫男…っ、リズベット様はお優しいが、私は優しくなんかないぞ…っ。必ず見つけ出して殺してやる…っ!)
大好きで、もはや崇拝する主人を汚した罪は重い。
見つけ出して捕らえたいが、リズベットに打ち明けることができない以上、人手は限られる。
その上、バレないように行動するとなると、少しずつ休暇をとっての動きになるが、そんなことで捕らえられるはずもない。
(ロナウド様に相談してみるか…。アイツは獣人解放戦線のメンバーだったんだ…、憲兵団が追うだけの価値があるはず…。ロナウド様に捕らえていただければ、リズベット様の耳に入って悲しませることなく、アイツを処罰できる…)
そして、シオンは最悪の手を取ってしまう。
ロナウドのこれまでの態度から、信頼に足る男だと思ってしまった。
シオンは忠実なるリズベットの僕だが、それでもやはり、一言で言うならバカであった。
リズベットの教えでまともにはなったが、人間が初等教育を受けている頃、スラム街で盗みや売春で生計を立てていた娘である、根本的に考えが足りていなかった…。
ーーーーーーーーーーーーーーー
「リズベット様、ロナウド様と憲兵団が来ております…。」
リズベットの元に報告が入り、シオンを伴って対応に向かうリズベット。
裏の事情を知らないリズベットは、またダーウェルが来たのかとため息をついたが、シオンは「アルの逮捕のためにロナウド様が動いてくれた」と喜んだ。
しかし、門の前まで行くと、様子がおかしいことに気がつく。
「アル…、アルですか?数日前から屋敷から出て行ってしまって、私たちも探しているところです…」
(…憲兵の数が多い。それに、きちんと装備を整えて来ている。…嫌な予感がするわね…。)
その嫌な予感は的中し、剣を構えた憲兵が屋敷の中に強制的に入り、獣人の使用人を捕らえ始めた。
クリスティア家で働く獣人のほとんどが、人間に嫌な思い出を持っており、悲鳴が屋敷内に響き渡る。
「ちょっ、ちょっと、これはダーウェル様はご存知なのですか?」
ダーウェルは自分に好意を持っており、クリスティア家と敵対するような行動はしないと思っていた。
しかし、アルの逮捕状という大義名分を携え、強制逮捕という強引な手段を取られるとは思ってもいなかった。
リズベットの抗議も虚しく、側近のシオンも手錠と腰縄をつけられ、他の獣人たちと共に連行されていく。
※元投稿はこちら >>