朝の日光が窓から差し込み、小鳥の囀りが聞こえる早朝。
鼻歌まじりに廊下を歩くシオンは、リズベットの部屋の前で止まる。
リズベットを起こすのはシオンの役目であり、使用人が増えた今でもこれだけは譲っていない。
1日の始めに最初に会うのは自分であることに、ちょっとした優越感を覚えていた。
とはいえ、リズベットはいつも自分で起きており、ノックをすると、「はーい」と澄んだ声で返事してくれるのが日課だが…、
(…ん?反応がないぞ…。こんなことはリズベット様にお仕えして以来初めてだが…)
もう一度ノックしてみても反応はない。
「リズベット様、失礼致します」と声をかけ、そーっと扉を開けると、毛布にくるまったままのリズベットが横たわっていた。アルが盛った睡眠薬は常時の倍であり、効き目が強すぎてまだ深い眠りに落ちていた。
(リズベット様、やはりお疲れが溜まっているようですね…。ダーウェルのやつ…憲兵隊だがなんだか知らんが、リズベット様を困らせるやつは私が許さないぞ…っ)
とは思いながらも、リズベットの寝顔を見るのはなんだかんだで初めてであり、敬愛する主人の無防備な姿に少しだけ心躍る。
丈の長いスカートの中で尻尾が揺れて、「ファサファサ」と布が擦れる音をさせながら、ベットのそばまで行く。
(おぉ、なんと綺麗なお顔…っ。リズベット様から教わったが、昔の聖人が神様にとして扱われている宗教があるらしいけれど…、私だったらリズベット様を神様にするな。…こんなにお綺麗で神々しくて、優しくて清らかで、女神様が人間に化けた姿と言っても過言では…。……ん?)
すうすう寝息を立てるリズベットの顔を堪能していたが、ある違和感に気がつく。
リズベットからしてはいけない…、無縁でなくてはいけない、シオンにとっては懐かしさも感じる匂いがしていた。
(なぜリズベット様からザーメンの匂いが…?誰か部屋に侵入した…、のか…?)
毛が逆立ち、獣としての本能が際立つ。
隠蔽したようだが、犬族特有の鼻の強さがそれを見破り、そのまま部屋の匂いを集中して嗅ぐと…、
「スン…、スンスン…」
(これは、間違いない…、アルだ…!あの男…、リズベット様が家族に迎え入れてくれたのに、何を…っ)
「…んっ、ふわ…ぁっ、んん…、あれ、シオン…?おはよう…、なんだか今日はとっても眠いわ…。」
モゾモゾと人が部屋で動いている気配でリズベットがようやく起き、主人の着替えを手伝った。
その際、アルの疑惑について言及はしなかった。リズベットは純真無垢であり、性とかけ離れた存在(であってほしいと思っている)
信用しているアルが不敬を働いたとなれば、きっとリズベットはショックを受けるはず。
事実がハッキリしたら告げなくてはならないだろうが…。
「おいっ、アルッ!貴様リズベット様に何をしたっ!ここを開けろッ!」
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