「はあっ、はぁ…っ、ぁあ…っ、リズ…っ、なんでぇ…っ、リズ…ぅっ」
大親友に痴態を見られた挙句、その親友からの強烈なカミングアウトを受け、うわごとのようにリズの名をつぶやくメイサ。
心穏やかで優しい性格のメイサにはあまりのショックに耐えきれず、拘束から解放されても床に突っ伏して立つこともできなかった。
「…チッ。まあいいわ。時間はたっぷりあるし、少し休ませてあげなさい。」
ショックから立ち直れないメイサをアレクは担ぎ、ベッドに横たわらせる。
ティアラや床に散らばったドレスはそのまま、アレクとリーゼロッテは部屋を後にした。
そして、リーゼロッテはドアノブのカバーを外すと、隠されていた鍵穴が現れ、部屋の外から施錠した。
メイサの一件がなければ、そこはアレクが私室として使っていた部屋。
不測の事態に備え、アレクを閉じ込めることもできるようにしていた。リーゼロッテの用心深さに呆れたような表情をするアレクに、悪びれる様子もなく、長い廊下を歩き始めた。
メイサの私室にアレクを連れ、ベッドへと誘った。メイサを差し出したのだから、褒美を取らせるつもりで、彼が金よりも好むもの。
リーゼロッテはかなりの上機嫌であり、鼻歌まじりにパイプの先に煙草の葉を詰め込んだ。
メイサを陥れる一仕事を終え、歪んだ口先でパイプを咥え、煙草の煙を肺に吸い込み、紫煙を天井に向かって吐いた。
メイサは暫くの間、ここに滞在させ、これまでの私怨を晴らすつもりであり、僻みや妬みの深さにアレクは呆れたものの、簡単に同調した。
(あの映像がある限り、メイサは終わり…。そこらの庶民の言葉ではなく、地位を確立した私の言葉だもの。証拠もある以上、レイウス公も取り合わないわけにはいかない…。それに加え、調査したところでは、サリーナ嬢を祝うパーティでの婚約嘆願劇…、サリーナ嬢は上手くやったようだけど、酷く激昂したそうね…。あんな映像を見て、レイウス公は冷静に物事を判断できるかしら…。アレクは顔を隠しているけれど、私が「あれはアレクであり、サリーナ嬢はメイサとの不義のために利用しただけ」と告げれば…、ふふっ、人の命を握るというのは楽しいものね…)
アレクの読み通り、リーゼロッテは読み違えている。
あの映像は決定的なものであり、いくらメイサが言い訳をしたところで、激昂するレイウスが冷静ではいられず、並び立つ資格を持つプリムローズ家当主からの告発が勝るはずだと考えていた。
しかし、実際にそのようにしたところで、仮にレイウスが激昂し、疑いをかけるメイサの声を聞かなかったとしても、当然サリーナが二人を庇い立て説得するだろう。
そうなれば、虚偽の告発をした魔女として断罪されるのはリーゼロッテになる…。
メイサのことになれば優秀な女当主も、普段の思考の深さには至らない。
アレクが語る今後の展望に、目を細め、ひたすら紫煙を吐き出しながら、値踏みするように聞き続けた。
「…貴方、よほど悪巧み長けているのね。お利口で良心に溢れるサリーナ嬢も騙されるはずだわ。…ふふっ、うふふ…っ、いいわね…、あのメイサがストリップ嬢…っ。…それにあの下衆に言いようにされるなんて、考えただけで笑いが止まらないわ。そう、以前話した通りよ。いちいち取引に難癖をつけられて、困っているのよ。男尊女卑的思想が強くてねえ、そういう奴に限って権力があるものよ。実際、大きな商会の代表だもの、こと商売においては揉めるわけにいかないわ。…いいわね、まさしく一石二鳥であるうえ、とっても楽しめそうよ。」
パイプを口から離し、ニヤリと笑い、長い脚を持ち上げ、アレクの股間をぎゅっと踏む。
「ふふっ、やはり固いままね。メイサとのお楽しみを邪魔してしまったのだもの。…あの子のような天使様の代わりが務まるはずもないけれど、今は全てを忘れ、ただの雄と雌になりましょう…?」
アレクに向き合い、髪を撫でるように触り、耳元で妖艶に囁く、毒薬のように妖しいリーゼロッテ。純真無垢なサリーナや天真爛漫なメイサを喰い続けたアレクにとっては、これも新鮮かもしれない。
【ご迷惑をおかけしました…っ。
リズベットをキャラとして使用していたイメは、人間の他に獣人がいる世界のお話です。
現在のように人間が世界のイニシアチブを握っていて、獣人は差別に晒されています。獣人は奴隷として売買されていて、雄は力仕事、雌は愛玩用…といった具合です。獣人保護管理法という実質的に獣人の権利を制限する法もありわ国全体で差別が横行しているような始末です。
(適切な表現ではないのかもしれませんが、奴隷船などもあった頃の黒人のようなイメージです)
そんなふうに誰もが獣人を酷く扱うなかで、リズベットという貴族の娘は、同じように生きている獣人を差別することに疑問を抱きます。
そこで、奴隷商から買った獣人や飽きられて捨てられた獣人などを私邸に保護し、リズベットの使用人とすることで、酷い差別から守り始めました。
一方で獣人も数多く、虐げられるだけの獣人もいれば、人を敵視し、レジスタンスとなる過激派の獣人たちもいます。人が支配する世の中を壊し、獣人たちが頂点に立とうと考える者たちで、いわゆるテロリスト「獣人解放戦線」です。
ある時、リズベット邸に獣人解放戦線での活動についていけず、逃走してきた獣人が訪れます。
リズベットは獣人の境遇に同情するものの、獣人解放戦線のテロ行為については批判的でした。
そのため、暴力の輪から抜け出そうとした獣人を保護するのですが…。
というような内容です。
この後、
テロリストを匿っている事実を利用され、当局に「獣人たちを集め、国家転覆を企んでいる」としてリズベットは逮捕され、虚偽の自白をさせるために拷問を受ける。
もしくは、
「差別と戦う同士を甘言で惑わし、奴隷と化した。」として、獣人解放戦線に襲撃され、嬲られる。
みたいな感じの展開を妄想したものです。
心優しい貴族の娘…という感じですので、サリーナの前身的なものかもしれないです。
この後の展開が結構凄惨なものですので、結局イメの相手は現れず、色々設定とかを妄想したままになってましたので、リズベットも深層心理から勝手に出てきてしまいました…。】
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