「ふふっ、それではそろそろ戻りましょうか?夜も更けてきたところですし…」
ひとしきりクスクス笑った後、満足したように冷たく張り詰めた空気を吸い込み、深呼吸する。
ゆらめく蝋燭の光に目を向け、そろそろ戻ろうと提案したが…
「結婚をした初めての夜…、初夜と呼ばれるそれは特別なものなのでしょう…。うーん…」
夫婦となったその日、初めての夜に何をするか…と問われるが、当然分からない。
本来であれば12歳の頃には一通りの性教育を受けるべきだったが、サリーナのその頃は特に病気がひどい時であり、ベッドの上から動くこともままならなかった時期。
当然受けるべき性教育は受けてこず、病気によって縁談も流れたせいで、その機会を失い、そういった話をする友人もおらず、今のサリーナができてしまっていた。
「神に誓いを立てた日の夜というと…、聖書を読み合う…とかでしょうか?」
と、的外れなことを真剣に言い、アレクを上目遣いで見上げる。
目が合っている、と思っているが、アレクの視線は瑞々しく潤う唇に向けられていることに気が付かず…。
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