「はぁ…っ、はぁ…っ、はい…っ。こんなにも遠かったのですね。以前の屋敷に向かう時は、ずっと寝たきりでしたので…。衛兵の皆さんはお優しいのですが、少々しっかりしすぎというか…。本当はアレクともっと居たいのに…。」
港町を抜け、山を越えるような旅路。
サリーナは完治したとされているが、療養明け直後であり、領主が溺愛する娘。
何かあってはいけないと、神経質なほどゆったりとした旅で、変わりやすい山の天気にも悩まされながら休憩を多く取り、予定よりも長引いたものになっていた。
各宿は最も高価な部屋が用意され、あまりに広い部屋に1人では寂しくなったサリーナがアレクを呼ぼうと部屋を出た際…
「…ひゃあっ!?お二人はなぜそこに…?」
「お嬢様、どうされましたか…?もしや、体調が…。」
「帯同している医者を呼んできます!」
部屋前にいた衛兵2人に気が付かず、大ごとになってしまった日もあった。
馬車も専用で孤独であり、アレクと触れ合う日はやむを得ない野宿の夜に限っていて、野宿が決まった際にはサリーナから合図を送っていたほどだった。
「ルシア…、どなたか存じませんが、アレクが仰るのなら希望してみます。お母様に伝えれば…、ぁんっ!ちょっ、あまりくっついては…、今日は水浴びしかしてないから…っ、ぁんっ」
我慢できずに覆い被さるアレクによって、地面に敷いた毛布に押し倒される、口付けをかわす。
野宿の日は水浴び程度しか行えず、身綺麗とは言えないが、そもそも馬車に座っているだけで運動は特になく、肌を直に嗅いでも臭うことはない。
しかし、露出癖の開花によって裸になる程度ではそれほど恥ずかしがることがなくなったサリーナが恥じらう姿は、初期の頃を思い出させ、アレクをより興奮させた…。
その日は何度も抱き合って、他愛のない会話をし、そしてまた…。夜が明ける頃まで触れ合っていた2人は名残惜しく、日の出に照らされながら最後の口付けを交わし、それぞれのテントへこっそりと戻った。
「うわぁ…っ、懐かしいです…。本当に戻ってきたのですね…。」
野営地を出発したサリーナ一行は、昼過ぎ頃にはレイウス候城下に到着した。
もう二度と帰ってくることはないと、遠く離れた地で孤独に死ぬのだと思っていた。
一瞬でこれまでの思い出が脳内を巡り、サリーナの瞳から一筋の涙が溢れた。
城下町はサリーナの祝福で溢れ返り、旗や手を振る民たち一人一人に向かって、窓から乗り出して大きく手を振り返した。
屋敷に幽閉される直前の末期のサリーナは、痩せ細り、髪質にも水分がなくてパサパサで、他国に轟く美貌には陰りが見えていた。
今の艶やかで瑞々しく、可憐な笑みを浮かべる姫の姿を見て、多くの民が涙を溢し祝福した。
レイウスとメイサの前に馬車が止まると、サリーナは勢いよく飛び出し、2人に向かって駆け出した。
まるでタックルするような勢いで2人に抱きつき、ボロボロ大粒の涙を溢す。
「お父様っ、お母様…っ。もう走っても咳はしません…っ。発作も、熱も、寝込むこともありません…っ。どうか、またお側に置いてください…っ。」
「当たり前だ、サリーナ…。これまですまなかった…、よく辛抱したな…。メイサ、サリーナを部屋に連れて行ってくれ。長旅で疲れているだろう。」
「サリーナ、おいで。貴女の部屋は以前のまま残してあるの。いつか、きっと私たちのところに帰ってくるって信じていたから…。ココという女給がこれからは専属になるわ。年も近いし、良い子だからきっと仲良く…」
「お、お母様…。その、御付人の件ですが、その、ルシア…?という方が良くて…。」
「ルシア…?それは別に構わないけれど、どうして?」
「アレクがお知り合いらしく、その、気遣いもできてすごく良くしてくれる方と聞いて…。共通の知り合いがいた方が、そんなに緊張もしないですし…。」
「アレクとは仲良くやれていたみたいね。うーん…、ココはがっかりするかもしれないけれど…、付人の件は分かったわ。とにかく少し休みなさい。」
メイサに案内されながら、懐かしい城の廊下を歩く。
すれ違う女給や執事が恭しく頭を下げるが、その表情は感激に溢れており、メイサと会話をしながらでもサリーナは会釈して応えた。
そして、かつてのサリーナの自室に着く。
長年使用者がいなかったはずが、カビ臭くなく、机やベッドには埃ひとつない。
本やインテリア、父母からの毎年の誕生日プレゼントまで、全てがあの頃のままで、城に戻ったという実感が込み上げてくる。
着替えを済まし、ベッドに潜り込む。
感激で興奮していたがほとんど寝ておらず、眠気が一気に襲ってきた。
(お城でも…また、アレクと…。)
ウトウトし、ものの数分で意識はブラックアウトしていった。
【ありがとうございます。
もう少しサリーナとメイサの年齢を下げても良かったかな、と思いつつ、そのような形で行きたいと思います。
サリーナよりも小柄なメイサは第二子には耐えきれない身体で、レイウスも年齢による性欲の衰退から、欲求不満。サリーナとも違い、領地中に顔が知れ渡っているため、男娼を取ることもできず、悶々とする毎日。アレクから幽閉期間のサリーナの様子や思い出を、お酒を飲みながら聞かせてもらっていたけど、酔いが深くなってきて、何も知らないと思っているアレクにご褒美として「手ほどき」をしようと…
とかどうでしょう?
お聞かせしてくれた内容を重ねただけですが…。
もっとより良い案があれば是非そちらで…】
※元投稿はこちら >>