「わあ…っ、綺麗…。カラフルでキラキラしていますね…っ。S…M、クラブ…?何の同好会なのでしょうか…。」
路地に入ってからも変わらずキョロキョロし続けるサリーナ。
いかがわしい単語の意味もわからず、首を傾げながらも綺麗なネオンの灯りに目を奪われている。
「ここが、その、例の…。」
(アレクが下着や道具を仕入れているというお店…。…もしかして、もっと気持ちいいものがあったり…。)
ザーメンミルクを摂取する機会だけのはずだが、サリーナは女の悦びに夢中になりつつあった。
何も知らない無垢な身体から、手練のアレクに時間をかけて丹念に開発されたおかげで、快楽に抵抗感が全くなくなっていた。
(な、ぁっ、なにこれ…っ!?やっぱりそういう専門のお店なんだ…。)
店に入ると膨大な変態グッズの数に圧倒される。
スタンダードな道具類から、ドラゴンや触手などの架空の生物を模したディルドや、マネキンが着ている紐としか形容できないようなマイクロビキニなど。
全てが夜の営みのためのものであり、それを使う自分を想像してしまって、顔を赤くして立ち尽くす。
「…はい。普通、なのですものね。慣れてなくて、すみません…。」
アレクに囁かれ、小さく頷いて店内に歩みを進める。
近づいてきた男に目も合わせられず、床に目を伏したまま。
元来人見知りをする性格でもないサリーナ。
顔を上げられない要因は周りの道具類なのは見て明らか。
「は、はい…。アレクの妻、です…。」
アレクが用意した町娘の衣装。
ドレスなどよりも、肌に張り付くようなシルエットであり、身体の凹凸がわかりやすいものになっている。
生地の下の裸体を想像する、店主の舐めるような視線に気が付かず、俯いたまま。
店主に案内され、アレクと共に店内の奥へと歩みを進める。
店主とは挨拶だけだと思っていたが、先導する様子に少し戸惑いを覚えていた。
(夜のことって、こんなにオープンなものなのでしょうか…?お父様もお母様もお話ししてくださらなかったし…、隠すようなことでは…、でもアレクは普通にしているし…。)
店主がついて来た戸惑いと、恥ずかしいのが合わさり、俯いたままグルグル頭の中で考えていた。
アレクと店主の会話は聞いていなかったが、唐突に話を振られ、「え?」と素っ頓狂な声をあげてしまう。
驚いて顔を上げると、3人を遠巻きに囲むように客が集まって来ていた。
なんとも言えない圧を感じつつ、アレクと繋いでいる手のひらが、じわりと汗ばむ。
(普通…、普通なの…?バイブって、お昼とかに自分でする時に使うやつ…でしょう…?)
アレクに諭されてもモジモジ口籠るが、店主が「もしかして、あまりお気に召しませんでしたか…?特注だったのですが…」とわざとらしく悲しげな声をあげ、観念したように、サリーナは俯いたまま口を開いた。
「その、えっと、…はい。すごく、良いです…。」
「どういったところが?…ああ、いえ、特注で作ることも多く、今後の参考にしたく…。」
「え、ええ…?」
詳しくなんて感想など言えない。
ましてや数人程度だとしても、他人が周りを遠巻きに囲っている。
しかし、アレクが耳元で「変なことではないですから…、普通のことです。恥ずかしがることはないですから…」
と囁く。そうは言われても恥ずかしいのは恥ずかしい。
俯いたままのサリーナの顔を、アレクが少し覗き込むと、耳まで顔を真っ赤にしながら少し汗をかき、眉を八の字にして、困ったような、恥ずかしがるような、怯えるような、アレクが初めて見る表情をしていた。
「…ぅ、あの、えっと…、アレク…その、夫のが入っている時と、おんなじところがお腹の中で、その、擦れるというか…。そのバイブを使っていると、夜のことを思い出して、…ぅ、他のよりも気持ちいい…のです…。」
(こんなこと、アレクにも言ったことないのに…、早くここから逃げたい…。)
ボソボソと断片的に口を開いた。
かつて参加していた社交会の頃とは大違いな、吃るサリーナの姿。
自然と周りの視線は下腹部辺りに集中し、それを感じたサリーナは、もう片方の手でお腹の辺りの生地をぎゅっと掴む。
アレクの手を握る力も強くなり、身を寄せるように身体をより密着させる。
恥ずかしくて不安な時、何かあればアレクが助けてくれる…。
アレクに全幅の信頼を置いている証拠の仕草だった。
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