「い、いえ…下品などということは…私としては…サリーナ様からそのような申し出を頂いて光栄に思います…ですが…」
透き通るような白い肌をほんのりピンク色に染め俯くサリーナ…おそらくその言葉は咄嗟の思いつきではなく考え抜いた末のことであろう…
サリーナの美しさは、この世のものとは思えないほどだ。もし不治の病にかかってなければ国中の貴族はもちろんのこと、他国の王族からも婚姻の申し出が跡を絶たなかったに違いない。
庭師の息子であるアレクが言葉を交わすことなどない違う世界の女性なのだ。
その女性がアレクに女の喜びを教えて欲しいと願い出たのだ。
(まさか…サリーナ様からこんなことを…クククッ…)
アレクはサリーナのお父上から娘の世話を命ぜられた時、サリーナの病についてとことん調べ上げていた。その結果、治ることはほぼないことと感染するというのは噂だけであると掴んでいた。
アレクが1年近くひとつ屋根の下で暮したサリーナに対して欲情しながらも耐えてきたのは、サリーナに手を出したことが万が一でも人に知られサリーナのお父上の耳に入った時のことを考えてのこと…アレクの口元に浮かんだニヤリとした笑みは、降って湧いたような幸運に対してのもので、自分の口にした言葉を恥じて俯向いたサリーナは気づくことはなかった。
「わかりました…サリーナ様がそこまで仰るなら…私に出来ることは全てお教えします…でもこのことは絶対に他言なさらぬよう約束をしてください…もしお父上の耳にでもはいったら…私はもちろんのこと…私の父や母まで罰を受けることになります…」
シーツを握りしめ俯向いていたサリーナは顔を上げると「はい…約束します…」と口にする…
「ありがとうございます…では…形だけですが…今日から私たちは夫婦の契を結んだことにしましょう…いえ…あくまで仮にです…夫婦でなければお教えできないことも沢山ありますし…なによりサリーナ様には「妻」というものも知っていただきたいと思いますので…」
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