「あ……神林、さん、?」
暗闇の中で身動きも取れず途方に暮れていたところに、貴方の優しい声音と暖かくて大きな掌を感じて、哉は安堵する。
アイマスクを取った時の哉の目は潤んでおり、怯えた色から一気に安心したような目で見つめる。
「……もう、悪ふざけが過ぎます。誰か来たら、どうするんですか…」
抱き留められ少しずつ緊張が解けてきたのか、涙目のまま貴方を睨み付ける。
外した拘束具たちをカゴに入れているのを見て、体をグッと強張らせるも、他の誰かに使うのだと自身に暗示をかける。
「(やだ、この人私が使うと思ってるよね…?違う、私はそんなの使わないから、そんなにジロジロ見ないで…)」
レジを通す間、店員の男性が哉を見つめているのに気付いて、貴方の後ろに隠れるように一歩下がる。
好奇の目が自分に向けられていると察知した哉は、俯き加減で精算が過ぎるのを待って。
拘束具を付けられて放置された不安感と、好奇の目で見られた羞恥心と、哉は感情の振り幅が大き過ぎて疲弊していた。
そのまま貴方に連れられるまま、気が付けば高級マンションの一室に通されて。
「(やっぱり神林さんはお仕事出来るから、住んでるところも違うなあ…お部屋広いし、清潔感があるし、…白いお部屋って、なんか意外だなあ…)」
ソファにちょこんと座って室内を見回しながらぼんやりそんな事を考えて。
張り詰めた感情が和らいだのか、職場ではあまり見せない様な、あどけない表情を見せる。
「(…ん?あれ?普通に、お邪魔しちゃったけど、これはまずいのでは?流石にお家に上がっちゃ駄目なのに、やばい、ぼーっとしちゃってた…)」
「あの、神林さん。お気遣いありがとうございます。お邪魔するのは申し訳ないので、私帰りますね?」
ソファから立ち上がって、キッチンでコーヒーの準備をする貴方の背中に向かって声をかける。
【簡単だけど意地悪なんですね。笑
お手柔らかにお願いしますね。笑
はい、楽しみです。】
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