「…そーなのっ、お母さん、最近構ってくれなくてめちゃくちゃ寂しいのっ!もうっ、新しいお義父さんは良い人だけど…、なんか、上辺だけっていうか…」
「夏芽に服とか買ったり、お小遣いくれたりしてるんだろ?」
「うん…。でも、なんか時々厭らしい目をしているというか…、新しいお義父さんが不安なだけかも…。お母さんはなんかラブラブ〜って感じだしさあ…」
今日も美奈子と次郎は2人で出かけて行った。そんな日は拓海と一緒にいるのが日課だった。
しかし、次郎は夏芽を邪険にするでもなく、勉強を教えてくれたり、お小遣いや買い物も惜しまないでくれていた。
悪い人ではないと思う一方、なんだか変な胸騒ぎを覚えていた…。
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「今日はありがとうございます。父も母も、きっと次郎さんのことを気に入ってくれています。」
墓参りを済ませ、左手の薬指を見つめる。
シングルマザーとなったあの日から、薬指のリングは純愛の印から、夏芽を守る覚悟の証に変わった。
これまで余裕がなかった。
夏芽と一緒に暮らしているだけで幸せだったが、生きるにも金が必要。
特に夏芽には我慢してほしくなくて、自分を削ってすり減らしてきた生活。
先日、次郎が代わりに借金の返済を行い、肩の荷がおり、久々に晴れやかな気持ちだった。
指輪を見つめると、次郎と結婚したという実感が湧いてきて、ほんの少しの寂しさとそれを飲み込むほどの嬉しさが溢れ、涙が溢れてしまう。
「2人で夏芽を…、大切に育てていきましょうね…。夏芽が大人になったら、2人で…、ふふっ、まだまだ先の話ですねっ。」
美奈子は見るからに上機嫌だった。
借金もなくなり、亡くなった両親への挨拶を済ませ、指輪を嵌めてもらったのだから、色々と安心している。
だからこそ、部屋をとっていると言われてもそこまで取り乱さず、むしろ少し覚悟をしていて、小さく頷いた。
(今日…なのね…。下着まともなの着けていないし、幻滅されないかしら…)
苦しい生活の中、下着を買い替えることもままならない。上下異なる下着だし、陰毛の手入れだって綺麗にできていない。
(それに…、SEXは苦手なのよね…。特に気持ちよくなれないし…、つまらない女だと思われないか心配…。)
SEXは快楽を得るものではなく、愛を確かめ合うものだと考えている。
経験人数は亡夫のみで、SEXも子作りのためのものだった。
性欲は薄く、イった経験など数えるほどしかない。
ここにきて不安げな美奈子の手を握り、次郎が励ましてくれた。
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