「ご両親の墓参りが済んだら食事に行こう…美奈子に渡したいものもあるし…」
夏芽からも結婚の了承を得て色々な準備を進めるなか、次郎と美奈子は、美奈子の両親の墓へと向かっていた。
結婚の報告をすると言う建前…次郎にとっては面倒以外の何者でもなかったが、これも「いい人」としての振る舞いのひとつだった。
仮に美奈子の両親が健在であったならば、美奈子が将来の不安から次郎になびくこともなかったに違いない…そういう意味では早く死んでくれたことに感謝の意を表すのも悪くないと次郎は思っていた。
(あんたたちの娘は俺がかわいがってやるからな…ついでに孫もな…安心しろよ…)
墓の前で目を閉じ手を合わせる美奈子の横顔に目を向け、ニヤリと笑う次郎だった。
「美奈子さん…これ…」
食事を前にして次郎は美奈子に小さな箱を差し出した。
「結婚指輪だよ…大袈裟な結婚式は挙げないことにはしたけど…これだけはちゃんと渡さないと…」
あの夏芽とは初めて会った日以降、美奈子は指輪を外したまま…次郎は美奈子の手をとると薬指に指輪をはめた。
「もうこれで私たちは夫婦だ…キミたちのことは私が必ず守るから…」
はめられた指輪をじっと見つめ、美奈子は次郎に「よろしくお願いします…」と嬉しそうな笑顔をみせた。
「このレストランの上に…部屋がとってあるんだ…」
次郎の言葉に美奈子が一瞬ドキッとした顔を見せるが、小さく頷いた。
(覚悟はしてるみたいだな…今日まて我慢してんだ…せいぜい楽しませてもらおう…クククッ…)
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