「…は?ひゃ、百万円っ!?」
(私とするために百万円って…。お金持ちってこわ…)
待合室でスマホをいじっていたら夏芽だが、思わずスマホを落としてしまう。
どんどん競りは白熱するようになってきたと思っていたが、いよいよ値段が恐ろしい額になってしまった。
しかし、それだけ夏芽の取り分も増え、クレープ屋さんの夢も現実に近づく。
「睡眠姦って…。そんなプレイがあるんですね…。寝たふりをしてればいいんですよね?」
美紀は妙に歯切れが悪いが、やることはひとつ。あれからアダルトショップの店長も来ていないし、露出プレイが多くなった程度で嫌なことはそんなにない。むしろ気持ちいいくらい。
「…あの、美紀さん。本当にありがとうございます。美紀さんのおかげで住むところもあるし、お仕事ももらえて…。あのっ、今日の帰り、拓海も誘ってご飯食べに行きませんか?私、ちょっとしたお礼にご馳走しますっ!」
高卒ですらない夏芽が10万を稼ぐことすらかなり難しい。
それが今や一晩で100万。
美紀は相変わらず歯切れの悪い返事だったが、強引に約束を取り付けた。
ちょっとした楽しみができ、ウキウキ気分で地下へと降りていった。
(えっと、高校の制服で、ベッドで寝ていること…、これがお客様の要望ね…。正直意味分かんないけど…。)
ベッドに寝そべり、目を閉じる。
時計の秒針を刻む音と心臓の鼓動がリンクし、音が大きく高鳴る。
(これで100万…。お金が貯まったら、どうやって拓海に言おう…。変にお金稼いでいたら、どうやって稼いだから勘繰られるよね…。クレープ屋さんやるなら専門学校?とか調理師免許?とか、そう言うのが必要になるだろうし、お金はあればある分いいし…。)
目を閉じて色々考えていると、扉が開く音がする。
寝たふりをするため、自然体を務めて、目を閉じたまま。
胸を触られるか、キスをされるか…、いきなりスカートの中に手を入れられるか、どれかだと思っていたが…。
「…んっ、ングッ!?ぁっ、ぅー…っ」
何かを口元に押し付けられる。
アルコールの強い薬品臭と酸味が混じった、独特な刺激臭。驚い目を見開いたが、その視界はぐにゃぐにゃに歪んでおり、焦点が定まらない。
くぐもった悲鳴だとしても声を上げようとするが、喉にすら力が入らない。
すーっとグラデーションのように意識が消えていき、目の前が真っ黒になった。
(頭いたた…っ、ってか、あれ…、どこ?…私の部屋…?)
薬品に無理やり眠らされたせいか、酷い頭痛で目が覚めた。
目を開けると、懐かしい実家の匂い、景色。
すぐにここがどこか理解した。
そして…
「…え?な、ぁっ、えっ!?な、なんでっ!?拓海ッ!!拓海ッ!!」
低いしゃがれた声。
夏芽のトラウマで、恐怖の対象。
夏芽を調教し、普通じゃ満足できなくさせま次郎がいた。
一気に汗が噴き出て、震えが止まらない。
パニックになりながらスマホを探るが、プレイルームにいた状態で連れ出されている。
財布やスマホなどは事務室に置きっぱなし、助けを呼ぶ手段や逃げる手立てはない。
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