「ホントに大丈夫?もう少し休んだほうがいいんじゃない?」
美紀に叱られたと落ち込んでいた夏芽だったが、家で3日間のんびり過したことが良かったのか、元気を取り戻し仕事に復帰することになった。
2人で家を出て駅で別れる際に夏芽を気遣い拓海は声をかけたが、夏芽は「もう大丈夫!それに夢のために頑張らないと…」と笑顔で答えた。
「うん…そうだね…でも無理はしないでね…それじゃあ…」
拓海は手を振り夏芽とは反対側のホームへと…
少し心配ではあったが、夢のためと言われると納得せざるおえない…自分も頑張ろうと夏芽に手を振り電車に乗り込んだ。
この3日間は幸せを感じた。
朝、夏芽がお出かけのキスをしてくれ、帰れば部屋は綺麗に掃除がされ「ご飯にする?お風呂?それとも…私?」ベタなお出迎え…
顔を見合わせ吹き出し笑い転げた…
まるで新婚の夫婦のような時間だった…
夏芽も拓海同様に幸せを感じてはいたが、仕事への復帰を早々と決めたのは、どうしようもなく募る身体の疼きからだ。
心は満たされても夏芽の身体は拓海とのセックスだけでは満足できなくなっていたのだ。
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「おっ?遠藤か…おはよう。今日はビルの清掃作業だぞ…」
会社に着くと拓海を見つけた上司が声をかけた。
「ビルの清掃作業は初めだったな…まぁ仕事は窓や床などの清掃だが、ひとつだけ注意することがある…会社の社屋などの清掃に入る場合、従業員や来客の顔は見ないようにな…今日入る会員制の団体や宗教施設などは特にな…内部のことには干渉しないこと…もし見てしまったことがあっても絶対に口外はしないこと…いいな?帽子は深く被って顔を上げないことだ…」
拓海は「はい!」と答え、上司の注意事項に耳を傾けた。
(えっ…?こ、ここって…)
ワンボックスカー2台で着いた先は夏芽が務めるジムのビルだった。
驚くと同時に夏芽に会えるかも…と考えた拓海だったが、朝の上司からの注意を思い出す…
(もし見かけても話しかけたりはダメだな…しょうがないか…)
この時の拓海はジムでなつのとんでもない姿を見ることになるとは考えてもいなかった…
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「おはよう…夏芽ちゃん…もう大丈夫なの?拓海クンから連絡受けてビックリしちゃったわよ…もしかしたら私が叱ったことが原因?それなら気にしないでね…私も立場上…だからね…それと会員さんたち…夏芽ちゃんが休みだって聞いてガッカリしてたわよ…4日ぶりだから今日の競りは盛り上がりそうね…頑張ってね…」
美紀に叱られたあとに、そのまま休んでしまい顔を合わせづらかった夏芽だったが、意外にも美紀はあっけらかんといつも様子…ホッと胸を撫で下ろした。
美紀が言ったように競りは盛り上がり、高値で競り落とされた。
4日ぶりということもあり夏芽も意気揚々とプレイルームに向かった。
プレイルームでは中年の痩せた男が待っていた。
「よろしくお願いします…」
夏芽が挨拶をし顔を上げたが、相手の男の顔に見覚えがあるような気がした…
「あれ?俺のこと覚えてない?何回か顔を合わせたけど…あの時は夏芽ちゃん…それどころじゃなかったもんね…」
夏芽はキョトンとして男の顔を暫く見つめたあと、目を見開いた。
男は次郎に連れて行かれたアダルトショップの店長だったのだ。
「やっと思い出してくれたんだね…久しぶりだね…黒崎さんから夏芽ちゃんがいなくなったって聞いてたけど…こんなところで働いていたなんてね…店の客からこのシムで女子高生が働いているって来てみてんだけど…まさか夏芽ちゃんだったとはね…驚いたよ…」
男は懐かしい顔に会ったとばかりに饒舌だったが、夏芽の顔からは血の気が引き真っ青になっていた。
当然だった…
次郎もアダルトショップの常連のひとり…店長がジムの話を聞いたとなると次郎の耳にも入っているかもしれない…あの男ならジムの会員になり現れるかもしれないのだ…
「そんな顔はしなくても大丈夫だよ…黒崎さんには話してないし店の客が皆知ってるわけじゃない…ジムのことは俺の親友から聞いたことだからさ…安心していいよ…その代わり今日は楽しませてね…よろしくね…夏芽ちゃん…」
この男の言うようにアダルトショップで噂になっていないのか…本当に次郎には話していないのか…この男を信用していいものか…
だが仮にこの男が次郎に夏芽のことを話していたとすれば、この場に次郎が現れていてもおかしくはない…いや間違いなく今頃は…
もう男の言うことを信じるしかなかった…
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