「はあ…、ごめんね、私のせいで…」
不動産会社を数件あたったがほとんど相手にされず、ダメ元で個人経営のお店をあたってみるも、そう都合がいいことはなく、途方に暮れてしまった。
希望に溢れた駆け落ちだったが、初日から現実を知ることになってしまった。
夕暮れ時になり、ため息をついて拓海に謝ると、「そんなことない」と拓海は言ってくれるが、
(私が拓海を巻き込んだんだ…、明日もどうにもならなかったら、風俗とかもあたってみよう…)
うまくいかないことに焦り、拓海が反対すると知りながら、密かに覚悟を固めていった。
「うう…ん、ホテルとかは高いよね…。公園かどっかで寝るにしても、補導されたら連れ戻されるかも…」
途方に暮れながら駅まで戻ると、駅前にはホテル街が広がっていることに気がつく。
「あれ、意外と安い…?…あ、御休憩とか書いてる…。」
この辺のホテルは思ってたより安い、と思ったが、『御休憩』という言葉を見て、どういったホテルのなのか理解して頬を赤く染める。
とはいえ、普通のホテルよりも一泊料金が安く、無人受付であることもあり、ここに泊まることにした。
「んん~っ、ベッド大きくて気持ちいい…っ!…はぁ、今日は疲れたね…。」
大きなベッドに飛び込み、疲れた身体で伸びる。
このまま目を閉じたら眠れそうだが、まだまだやるべきことはある。
「うん、これからどうするか考えないとね…。じゃあ、先お風呂いいよ。それとも一緒に入る?…えへへっ、冗談だって!」
拓海のシャワー音を聞きながら、ソファに腰掛け、リモコンでテレビの電源をつけると大画面に男女の営みが映し出される。
(うわっ、びっくりしたっ!…、いっぱいエッチなことしてきたけど、そういえばラブホテルは初めてだな…。仕事どうしよう、ジムのバイト経験あるとはいえ、普通のバイトじゃなかったしなあ…)
AVが映ったテレビを消し、ぼーっと天井を眺めながら考える。
ジムでのバイト経験ありではあるが、インストラクターとかではなく、破廉恥な格好して男性を喜ばせていただけなのは理解している。
(ん?そういえば、美紀さんなら何かお仕事とか知らないかな…。風俗で働くにしても、未成年だとまともなところで働けないだろうし…)
風呂から上がった拓海と入れ替わるようにシャワーを浴びる。一日の疲れが泡と共に流れていく。
その時、思い出したのは美紀のことだった。身近で頼れる大人であり、簡単な相談に乗ってもらったり、勉強を教えてもらったこともあり、夏芽はかなり慕っていた。
「明日も何軒か行ってない不動産会社に行ってみて、ダメならまたお店を回ってみよっか。もし明日見つからなかったら、バイト先のお世話になってる人に相談してみようと思う…その人は女の人で頼りになる人だから、何かいい方法教えてくれるかも…」
シャワーを終えると明日について打ち合わせする。拓海から石鹸の香りがして意識してしまい、少し頬を赤らめるが、拓海も同じであったことは気が付かなかった。
そして、明日に備えて寝ることにし、二人で同じベッドに入る。
(拓海に犯されるんだろうな、ラブホテルだし…。好きな人相手ならセックスも楽しいのかな…。)
背中合わせになって目を瞑るが、鼓動が高鳴り、とても眠れない。
二人っきりで同じベッド、それに手を出されても夏芽は逆らえない状況。
これまで出会ってきた男からすると、夏芽は確実に犯されると思っていた。
セックスは気持ちいいものの、我を失うほどの快感だったり、頭が書き換えられるような感覚がして怖いものだと感じていた。
ベッドに寝転んでからしばらく、拓海は未だ夏芽に背中を向けたまま。
(あれ…?何もしてこない…。拓海は他の男の人と違うのかな…。大切にしてくれるのかな…)
拓海とセックスしたいと思う気持ちもあるが、それ以上に恐怖もあった。
しかし、拓海が何もアクションを起こさない様子に安心し、ゆっくり眠りについた。
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