悩んだ末、書き置きの横にメモを一つ残して家を出た。
書き置きには、『お義父さんへ。お母さんをよろしくお願いします』とだけ、書いておいた。
まだ約束の時間には全然早いが、次郎は勝手に夏芽の部屋に入ってくるし、いつばったり出くわすかわからず、そっと裏口の窓から外に出た。
深夜に一人で出歩くのは初めてで、補導などされないか、ビクビク怯えながら公園を目指した。
「ふぅ…、怖かった…。暗めの公園だし、ベンチで待ってれば見つかったりしないよね…。」
公園に着くと、ベンチに腰掛けて約束の時間を待つ。
電灯が少なくて薄暗い公園は、一人で待つ分には心細く、嫌な想像ばかりしてしまう。
(お義父さんにバレてて連れ戻しに来たりしたらどうしよ…。そもそも拓海来なかったら…。)
グルグル嫌なことばかり考えてしまい、ベンチに深く腰をかけて星空を見ながらひたすら待った。
「ううん、全然待ってないよっ。さっき来たばっかり。」
本当は2時間近く待っていたが、背後から拓海の声がして、満面の笑みで出迎える。
約束通り来てくれたことが何よりも嬉しかった。
「あ、あはは…、うん、ちょっと寒かった…。あったかいし、拓海の匂いがする…」
全然待ってない、と強がったものの、少し肌寒くて震えていたのがバレ、そっと上着をかけられる。
優しさや温もりに触れ、隣に座る拓海に肩を寄せる。
「早く朝になるといいね…、北の方に行こうよ。こういう逃亡する時はそういう決まりじゃない?」
手を握り、身を寄せ合いながら戯れて笑い合った。
今この瞬間だけは誰の邪魔もない二人だけの世界だった。
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