幼い頃から一緒に時を過ごしてきた2人のファーストキスは、甘いものではなかった…夏芽が自分から舌を差し入れ絡ませてきたのだ。
(な、夏芽っ…?)
思ってもいなかった夏芽の行動に拓海は驚き唇を重ねながら目を見開くが、夏芽は目を閉じているため、それには気づかない…
拓海の脳裏に義父に向かって舌を出し、その舌に義父ご吸い付く場面が浮かぶ…拓海はそれを打ち消すために夏芽の舌に舌を絡ませていった。
長い濃厚なファーストキスが終わると、夏芽は俯いたまま呟いた…「もう居場所がないかもしれない……」と…
それはおそらく、動画のことで夏芽を脅していた三宅が拓海に殴られたことと夏芽に逃げられたことに腹をたて動画ごバラまかれることを心配してのことだろう…その動画が夏芽の母親の美奈子にまて知れるかもしれないのだ。
「うん…2人てどこか遠くに行こう…2人で今度は砂の城じゃなく本当のお城を作るんだ…」
俯いたままの夏芽は、拓海のその言葉を聞いて思い切りだきついた…拓海もまた夏芽を強く抱きしめた。
………
(ホントにこれでよかったのか…いやこれしか夏芽を助ける方法はないんだ…)
夏芽を家の近くまで送ったあと、自宅に戻った拓海は荷造りをはじめた。
とりあえずの着替えと大した額の預金のない通帳…当面生活に必要なものをバックに詰め込む。
夏芽とは夜中の3時にあの公園で合流、電車の始発まで公園で時間を潰し誰も2人を知らない所まで行く予定だ。
今頃、夏芽も同じように荷造りをしているに違いない…
夜もふけ時計の針は2時半を指していた。
拓海は足音を立てないよう階段を下りると両親の寝室の襖を少し開け眠っている2人に頭を下げた。
『夏芽と誰も知らない所へ行く。今までありがとう』
そう書いたメモを残し家を出た…
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