(どうしよう…っ、110番をかける…?いや、そうなれば三宅達は終わりかもしれないけど、私も終わる…。)
拓海に電話をかけたあと、大きな木にもたれかかり、休みながらスマホの画面を見て考える。
ここらは電灯が少なく見つかりにくいと思われるが、その反面今どこに向かっているかもよくわからない。
(スマホで地図を開きながら走れられば船着き場までいけるかもだけど…。でも真っ暗な分、明かりを出したら見つかるかも…。流石にもう私が逃げ出していることに気がついてるよね…)
夏芽の目標は船に乗るか、人目があるところに行くことで、とりあえず船着き場を目指していた。
そして、走り続けたが、疲労や浣腸、絶頂のせいで身体が思うように動かず、すぐに息が上がって木に座り込んでしまう。
(見つかって連れ戻されたら酷い目に遭うんだろうな…、三宅のやつ異常だし…。もう一回拓海に…)
極限状態のなか、頭に思い浮かぶのは憎い拓海の姿では無く、父の葬式で夏芽を慰めてくれていた拓海の姿。先ほど電話に出なかったため、メッセージで助けを呼ぼうとした瞬間、会員の大声が聞こえ、飛び跳ねるように立ち上がって走り出した。
小中学では男子よりも足が早かった夏芽だが、高校生ともなれば体格差でどうしようもなく、そうでなくても疲労などで身体が重く、振り切ることができず、左腕を掴まれる。
「嫌っ、もう嫌なのっ!!触らないで…っ、気持ち悪い…っ!!た、拓海助けてぇっ!!!」
その場に落ちていた木の枝を拾い、腕を掴む会員を叩き、囲む男たちを蹴り付けて暴れるが、ヘロヘロの夏芽に大した力はなく、枝も簡単に取り上げられて両腕を抱えられる。
パニック気味に泣き叫ぶが、口を手で覆われて叫ぶことも許されず、別荘へと連れ帰された。
拓海にメッセージを打ちだした瞬間に見つかったため、拓海には「たす」とだけ送信してしまっていた。
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