「来れ…美味っ…」
夏芽が気になっていたというバナナチョコストロベリーにかぶりつき、夏芽を見た。思わず吹き出してしまう。
「お前さぁ…なんで鼻にクリームつくんだよ…わけわからんし…」
笑いながら手を伸ばし指先で鼻についたクリームを掬い、その指を舐めた。
まるで恋人同士のようだったが、拓海と夏芽にとって、それは何でもないことだった。
2ヶ月ほど誕生日が早いというだけで、幼い頃から何かとお姉さんぶって拓海の世話を焼き、時には拓海の口元についたご飯粒を夏芽がつまんで食べたり…
それが二人には当たり前のようになっていた。
まわりからは、しっかり者の夏芽と見られていたが、夏芽のこういう天然なところも魅力のひとつだった。
(何かこういうのって久しぶりな気がするなぁ…)
以前なら当たり前のことが今はなぜだか懐かしい気がする。
今日は…今は…あのことは考えないようにしよう…拓海はそう思った。
クレープ屋を出て二人でウインドウショッピングを楽しみ、ゲームセンターへも行った。
ここ最近のちょっと気まずい雰囲気はなく楽しく時間が過ぎていった。
だが、楽しい時間は永遠には続かず帰宅の時間となってしまう。
夏芽の家まで送っていった拓海だったが、家という安心できる場所ではなく、夏芽を地獄に連れてきたような気がした。
「じゃ、じゃあ…また明日…今日は楽しかった…」
拓海の姿が見えなくなるまで手を振っていた夏芽だったが、拓海の姿が見えなくなると笑顔が消え暗い顔で家の中へと入っていった。
………
(やっぱりか…帰りが遅いと思ったらアイツと会ってたのか…)
次郎は、部屋の窓から外を眺めていた。
拓海と遊んでいるだろうと大方の予想はついていた。
言いつけを守らず何時まで経っても帰って来ない夏芽に激怒…はしていなかった。
(まぁ…これをネタにして夏芽にお仕置きをするのも面白いな…)
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