その晩、拓海はほとんど眠れなかった。夏芽の姿が頭に浮かび、アレコレと考えてしまったのだった。
ようやく眠りについたのは東の空が明るくなり始めた頃で、母親に叱られ飛び起きた時には、ほぼ遅刻確定という時間だった。
朝食も取らず制服に着替えただけで家を飛び出す…走っていてはもう間に合わないと自転車を引っ張りだした。
「な、夏芽?な、なんでここに…」
自転車に飛び乗ろうとしたとき、夏芽が家の前に立っているこに気づいた。
待ち合わせの場所にいつまで経っても姿を見せない拓海に何度もLINEをしたが、既読にならず、心配になって家まで来たようだ。
「ご、ごめん…寝坊して…慌ててたからLINE気づかなった…」
「もうっ!」とほっぺを膨らませる夏芽は、普段と変わらず、昨夜の夏芽とは別人のようだ。
あれは夢だったのかと思ったほどだった。
覗きという卑劣なことをした自分を心配してくれた夏芽…罪悪感と自己嫌悪に襲われる…
サイトを見つけた時に夏芽を助けていれば…
(ごめんな…夏芽…オレは…ほんとに…)
何も言えずに夏芽を見つめていた拓海だったが、夏芽の声に我に返った。
「夏芽…後ろに乗って…しっかり掴まってろよ…」
夏芽を自転車の後ろに乗せると拓海は思い切り自転車を漕いだ。手を回し捉まる夏芽の胸が拓海の背中に押しつけられた…
ちょっとは時間が取れるようになられたようですね。
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