「(金城さん、普通に私のこと名前で呼んでるし…)」
むすっとした表情のまま、去っていく貴方の背中を睨み付けた後、もう一度深く溜息をつく。
それ以降は昼休憩の時の様な意地の悪い素振りは一切見せない貴方に安堵しながらも、どうにか夜の約束を放棄出来ないか考えながら仕事をこなす。
が、まともな打開策も浮かばないまま時間は過ぎていく。
ロビーに行く前に化粧室に入り、リップを塗り直し、纏めていた髪を解いて手櫛で整える。
「(金城さんのペースに呑まれないようにしなきゃ…)」
と自分を奮い立たせる為、両頬を軽くぺちぺちと叩き、ロビーへ向かう。
現れた貴方に小さく「お疲れ様です、」と告げるとすぐさま腰に手を回され、哉はその腕を引き剥がそうとする。
「ちょっ、金城さん…!誰かに見られたらどうするんですか…!何処で誰に会うか分からないんですよ…!?」
慣れないアプローチに困惑しながらも、貴方の腕はびくともせず。
哉だけ焦って周りをきょろきょろと見回して俯きがちに歩く。
「(っ…この人、本っ当に意地が悪過ぎる…!)」
不適な笑みを浮かべながら哉に問い掛ける貴方をキッと睨み付ける。
「…金城さんと…ほ、ホテルで…休憩、します…」
視線を逸らし、消え入りそうな程の小さな声で呟く。
腰に回された手と、意地悪な質問に、既に身体がきゅんと微かに疼いてしまっているのも哉はまだ気付かずにいて。
※元投稿はこちら >>