【すみません、ひとつ前の補足です。まだ見てなかったら飛ばして前を先に読んでから戻ってくださいね?】
はっ!はっ!はっ!はっ!
「りつ、がんばってー!もう少しだよ!」
(高校のグラウンドでは、様々な部活の練習で活気にあふれていました。律子が昔夢で会ったあのりつこも、今では高一。律子の様に岡女ではなく、地元の市立西高に通い始めます。
こちらのりつこはあの事件の後、周りに守られ助けられながら陸上を始め、今では長距離走で力をつけつつあります。今日もタイム計測をしていて…)
「ゴール!…っ、りつ?新記録だよ!」
ほんと?よぉし、ヤル気でてきた!タイムどり、ありがとね、のんちゃん。
あたしの方はもういいから、野球部のたかだんとこ、いってあげな…よ…
(突然身体中を走り抜ける高揚感、暖かい感情、目眩がする程の快感…りつこは走った後の熱さとは違う火照りを感じながら、紀子の肩にもたれ掛かります)
〈な…なにこの感じ…でも…昔一度だけ…同じような…〉
「ちょ…りつ?りつ?大丈夫?」
ん…あぁ…ごめん、大丈夫。ちょっと疲れちゃった…かな?しばら…く…ベン…チで…
「りつ?りつ!ちょっと!先生!りつが倒れた!」
(身体の奥、お腹の底から湧き出るぶわぁっ!とした波に頭まで呑まれると、りつこはそのままずり落ちる様に倒れてしまいました。同時に流れ込んで来るもう1人の自分の記憶。うっすらと目に映るのは紀子の心配そうな顔、そして集まる仲間…
あぁ…もうそんな時期?でも…早すぎ…ない?
そう思いながら、りつこは一面青々と広がる芝生に身を委ねます。そして目を覚ますと…)
「…あ、起きた?」
…やっぱりあなたね?おっきなあたし。
あたしがあの時のあなたくらいになったらって言ってたのは覚えてる。けど、少し早くない?…何かあった?
「あ…うん…あたしこのところ…幸せすぎて…だから無意識にあなたを…呼んだのかな?」
(起き上がり律子をみつめるりつこ。あれからまた格段にキレイになりながらも、困った様な仕草をする時の可愛らしさ。そんな律子を顔をまっかにさせながら見惚れるりつこ。)
「ふふふ…そんな顔して見ないの。はずかしいよ」
だって…ものすごく綺麗…で…可愛くて…
「あなたもなれるよ。もう少ししたらね?それより、その制服…もしかして…西高?」
(りつこはあれから自分の身の上を律子に話します。壮絶な闘いになるだろうと覚悟していたのが、まわりに助けられて守られてとても幸せに生きられてきたこと。しゅんくんとのこと。そしてまなとのこと…特にゆうすけさんのことを語った途端。律子が顔を覆って泣き出すので…)
ちょっと!どうしたの?そんなに泣かないで…
でないと…あたしも…あたしも…
(ポロポロともらい泣きしながら、りつこは自分の意識に違和感を感じています。前に会った時の様な、一つに繋がって溶け合っている一体感がありません。突如、急に全てが繋がり全てを悟ります。
だとしたら…もう時間がない…せめて…会ったら伝えようと決めていたあれだけでも…りつこは律子の溢れる涙を拭いてあげると抱きしめて、そして真正面に向かい合って…)
ねえ、あたし…?ごめん、もう…これで…あたしたち…お別れ…になる…んだ…
「…え?うそ?」
…あたしたち、もうべつの人間といってもおかしくない位ちがう人生歩んでるの。だから…だからもうこうして…繋がらなくなるの…
(途端に泣いてすがる律子。しゅんくんと結婚するの!花嫁さんになるの!と告白されて、後ろ髪を引かれます。ですが、わかってしまい自覚してしまった意識は自分ではどうしようもできません。りつこは律子をしっかりと抱きしめて、またも流れる涙を拭ってあげると、ほっぺに優しくキスをします)
ねえ…あなたには…感謝してもしきれない…
あたしが負うべきであった傷や痛み、辛さや悲しさを全てあなたが持っていってくれたおかげで…あたしはこうして幸せに走っていられる。でなければ、あたしじゃやっぱり耐えきれなかったよ。
ひとりで…よくがんばったね?あなたの方のまなも幸せそうでよかった。
ねぇ律子?ホントに…ホントに感謝してる…ありがとう…愛してるよ?
(その行動の意味を悟った律子も、涙をふいてりつこを胸に抱き、頭をなでてあげながら笑います。やがて律子の身体がりつこに溶け込む様に消えていき…周りの芝生が風に舞いあがると…)
やだ!やっぱり!あたしももっといたい!
もっとおっきくなるとこ見てて!あなたがこころの片隅にいるって感じてたから、あたし!あたし今まで!ここまでやってこれたんだよ!
なんで今なの?かみさま!いるなら教えてよ!どうして今なの!おねがい!おねがいおねがい!
おねがいだよおっ!
「りつ!りつこ!」
あ…あぁ…しゅんい…ち?どうして…ここに?
(保健室で寝かされたりつこ。聞けば常にうわごとのようにしゅんくんの名前を呼んでいたようです。もはや2人の仲は学年公認のようなものになっていて、あまりに名前を呼ぶので柔道部の道場まで、紀子がしゅんくんを呼びにいってくれたのです。)
あ…あたしね?前に話した…おっきなあたしに…会ってきたんだ。ものすごく綺麗になってて…びっくりした。やっぱり…歩んだ道は凄かったらしいけど、その分幸せが降り注ぎ始めてるんだって?
「よかったね…おっきなりつ…律子さん…かな?」
今度ね?むこうの瞬一と結婚するんだって!
(そこまで話すとりつこは、顔を赤らめて目を閉じると、唇を差し出します。保健室のベッドのカーテンの中、かなさる2人の影。しばらく唇を合わせた後、改めて見つめたりつこは…泣いていました)
いまのあたしと…むこうのあたし。もう…あまりに違いすぎて…会えなくなるってわかっちゃって…いままで…会ったら絶対に伝えたい事話して…お別れ…してきたんだ…
でもね瞬一!あたしやっぱりまだ離れたくないの!おっきなあたしと!泣き虫で脆くて…繊細で崩れそうなあたしを…ほっておけないよ!でも感じるの!もう交われないって…ねえ!どうしたらいい?
「…信じなよ?また…絶対会えるって…信じて待とう?僕も一緒に祈ってあげるから。それまで、りつもがんばって!律子さんに負けないくらいに綺麗にならなきゃね?」
…なれる…かな?だってホントにものすごく綺麗だったんだよ?心も…ぜったい澄んでるに違いない…
あんな人にあたしも…
「なれるよ?その為に僕がいるんだから」
しゅんいち…うん、そうだね?あたし頑張る!
今度はあたしもたくさんたくさん頑張って!…そうだね…あたしが瞬一の花嫁さんになる時に会わせてって…お願いする!だから…瞬一?まだ…早いかもしれないけど…
あたしの…あたしの事…ちゃんと時期がきたら…もらって…ください…
きゃっ!
(言い終わらないうちに強く抱きしめられます。耳元で「約束する」と言われ、泣きながら抱きしめ返すりつこ。)
「…もしもし?もういいですか?」
!のんちゃん!き、き、き、聞いて…た?
「聞いてたけど、聞かなかった事にしとくわ。だって、あなたたち何度目のプロポーズ?見てるこっちがお腹いっぱいになるの。
…ところで、具合はどう?」
おかげさまで。もうばっちり!みんなに守って助けられて、りつこは元気いっぱいでいられます!
「そう…じゃあぼちぼち帰ろうよ?星野くんも一緒にね?けんじ、校門のとこに待たせてるから、早く行こ?
そういえば、まなちゃん、今度の夏にこっち遊びに帰ってくるんだって?会ったらよろしく言っといてよ?」
それなら…みんなで一緒に会おうよ?まな、彼氏さん連れてくるんだって?瞬一の事も紹介したいし、たかだとの事も、報告しなくちゃいけないんじゃないの?のんちゃん…?
【これもまた、律子が送れたかもしれない「もしも」です。なんかお昼に急にこの光景が浮かんで、お別れの件の補足を兼ねて綴られせてもらいました。こちらのお返事はいらないですからね?あたしのいち妄想ですから。】
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