帰省当日、僕はまなみからの希望で大きめのワンボックスカーを借りて、しゅんくんと運転を代わりながらまなみの実家に向かった。
しゅんくんはバイクも乗っているだけあって、運転は上手で安心して任せられた。
久しぶりの帰省ということもあって、いつも以上にはしゃぐ子供たちの相手を律子とまなみがしていた。
やがて子供たちが落ち着き、はしゃぎ疲れた裕一が律子の膝枕で寝て、ゆりなも裕一にもたれて寝ていた。
するとまなが頬杖ついて車窓の外の景色を眺めていた律子に声をかけて、話をしていた。
話の内容は瞬一くんと話をしていた事もあって良く聞き取れなかったが、何かしら律子が悩んでいる様に僕には思えた。
そんな風に思いながら運転しているうちにまなの実家に着いて、荷物を持って呼び鈴を鳴らして、中に入ると「みんなお疲れさま、よく来たね?
あなた?りっちゃん来たわよ?ちょっと見ないうちにうんと綺麗になっちゃって!」「おばさま、やめて下さい…恥ずかしい…」って顔を赤くして照れながら言う律子がいつもより余計に可愛く見えた。
落ち着いてリラックスした笑顔で話をしている律子…すると「お、おいまなみ…」とお義父がまなみの腕を引いて声かけると「おとうさん!そんな隠れてないでいいのにぃ」「いやいや…そんなことより、りっちゃん、何か話があるんだって?まなみ何か聞いてるか?」と身体を隠す様にして聞くと「気になるんだったら、本人に聞いたら?」とまなみが言って押したので「ちょ、おいっ!」とお義父さんは言いながら姿を現し、「あ、おじさま。ご無沙汰してます。お元気そうで何よりです!」と言われて…
「あ、ありがとう。りっちゃんも元気そうで…よかった。」となんとなくりっちゃんが今回わざわざ訪ねて来た意味が察しているけど、りっちゃんから聞くまではそわそわした気分でいて
益々綺麗になったりっちゃんを目の当たりにして、照れてしまい変な感じで返事をしたみたいだった。
そして夕食前に律子が瞬一と一緒にお義父さんの前に行き、「おじさま?実は折り入ってお願いがあるんです…」と口火を切るとしゅんくんが隣に行き「あたし、この人と一緒になる事を決めました。
今回あたしの我儘で式より先に籍を入れようかと思ってまして、保証人をお願いしたいと思います。
あたしにとってこの家は第二の実家。おじさま、おばさまは両親の様に思っています。だから…」「どうか僕からもお願いいたします。」と律子と一緒に瞬一は頭を下げた。
「やっぱりね?あたしが言った通りでしょ、あなた?りっちゃん、この人ね?言われる前から名乗り出るくらいにヤル気満々なのよ?式にも父親代わりに出るだって息巻いて…」「母さん!余計なことは言わなくていい!
ま、まぁ…うちにとってりっちゃんはまなみと同じ娘の様に思っているから…頼まれなくても喜んで引き受けるよ?
星野君…か?…こう2人並んで纏う空気を感じると、何も言うことはない。
りっちゃんを宜しく頼む。」と笑顔でお義父さんが言った。
瞬君もその想いに応える様に大きく頷いた。
そんな様子を見て、僕が結婚の挨拶しに行った時を思い出す…お義父さんも娘の様に思っていた律子からこんな挨拶されるなんて…と僕まで胸の奥が熱くなるのを感じた。
「はい、決まり!それじゃあお食事にしましょう。」とお義母が言って、みんなで食事を始めた。
その夜は大いに盛り上がり、「星野君!本当、りっちゃんのこと、宜しく頼むよ!まぁ飲みなさい。」「はい!僕がこれから律子を幸せにします!」と話ながら乾杯をして飲み始め…
お義父さんは僕以外の飲み手が増えた事が嬉しい様子で、いつになく上機嫌でお酒のペースが自然とあがり、お義父さんは宴会がお開きになる頃には酔いつぶれ、子供たちと同じように寝てしまった。
その一方で「りつ、たのしかったねぇ?」「うん、こんなに笑ったの久しぶり。おじさまも相変わらずでよかったわ。」「そうだねぇ…」とまならが話をしてたら「ね、まな、後で散歩行かない?ちょっと夜風にあたりたいな…」と律子が誘うとまなはすぐに応じるだろうと思っていたところに「それなら、今行っておいでよ?まな、まだお母さんの片付け手伝うし。
ゆうすけぇ?りっちゃんに付き合ってあげて?」と声かけられて驚いた。
しゅんくんがそれなら僕が…と動こうとしたのがわかったがまなが制してしゅんくんに目配せをした。
僕は律子が僕に何か話があるんだと思って、「それじゃ…りっちゃん…僕が散歩につきあうよ?じゃあ行こうか?」と言って律子と一緒に家から出た。
「こうして、2人で歩くのもずいぶん久しぶりだね?
しかしりっちゃんは一体どこまで綺麗になるんだい?しゅんくんが少し羨ましいよ?」なんて少し自虐的なことを話ながら散歩していた。
僕の隣にいる綺麗な娘は、かつて愛していた娘…でも僕ではここまで律子を綺麗に出来ただろうか?
それはもう答えが出ている。
しゅんくんだから律子をここまで綺麗に出来たんだ。
少しだけ、男として悔しい思いはあるけれど、しゅんくんなら安心して律子を託していける…僕の出番はもうない。
その頃瞬一はまなの目配せで吹っ切れた思いを裕介さんに告げるその想いを察した。
大丈夫!そう思ったけど…2人が家を出て行く時、思わず手を伸ばそうとした時。
「ごめん…これはまなのわがまま…
今までのりつの…卒業なんだ…これから、あなたを更に真っ直ぐ見据えて貰うため…不安なら…まなが付き合うよ?」と僕の背中にぽふっと抱きついて静かに話すまなさん。
「そんな風に言われたら…何も僕には言えない…律子が戻ってくるのを待つよ。」と静かに言って前に回した手をそっと握ると「ありがとう…」と言われた。
まなさんのお母さんは片付けが終わり、お父さんの世話をやきに部屋から出て行き、部屋には僕とまなさんの2人きり。
「しかし…まなさん。律子と本当に魂の部分で半分?になっていたんだね?
何か不思議な感じ…りっちゃんを抱いた時にまなさんを感じたことがあったから…」ってその場の雰囲気に酔ったのかつい変な事を言ってしまった。
それは裕介さんがまなさんを抱いた時もきっと同じ想いをしたに違いないと思ったせいだった。
【まなみさん、お待たせ。
まさかこんな展開になるとは想像してなかった。
そうだね?りっちゃんにはもっと幸せに…
まなちゃんも、もっともっと幸せにしたいな~】
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