(そして帰省の当日。今回もまた車を選びました。
人数が多い事もあり大きめの車を借りて、運転はゆうすけさんとしゅんくん。
はしゃぐ子供達を相手にするのはまなみと律子。
子供らの騒ぎも一段落して、車内が落ち着き出します。律子は裕一を膝枕しながら流れる車窓の風景を頬杖ついて見ています。)
…りつ?もしかして、ホントにいいのかな?って思ってる…?
「…あたり。さすがまなだね?お見通しか…
あたしのわがままにみんな付き合ってくれて…しゅんいちもゆうさんも忙しいのに…
前にも言ったけど、あたし達は誓ってもうこれからずっと一緒に添い遂げるんだけど、それでも…それに…」
(言葉を濁らせた律子の手を、まなみは優しく笑みをこぼしながら握り締めます。目を細めてただ頷くだけ。律子はそれにすまなさそうに苦笑いして応えます。)
「みんなおつかれさま。よくきたね?
あなた?りっちゃん来たわよ?ちょっと見ない間にうんと綺麗になっちゃって!」
「おばさま、やめてください…恥ずかしい…」
(まなみの実家に着いてからの律子は、普段と変わらずにいました。落ち着いてリラックスした笑顔を見せてまなみの母と談笑しています。その様子をにこやかに見守るまなみの腕をひくのは…)
「お、おいまなみ…」
おとうさん!そんな隠れてないでいいのにぃ
「りっちゃん、何か話があるんだって?なんか聞いてるか?」
気になるんだったら、本人に聞いてみれば?
「ちょ、おいっ!」
「あ、おじさま。ご無沙汰してます。お元気そうで何よりです!」
(まなみの父も何となく察してはいます。ですがやはり気になってそわそわしていたようです。おまけにまた一段と綺麗になった律子に会って照れているようで…
そして、夕飯前のひと時…)
「おじさま?実は折り入ってお願いがあるんです…
あたし、この人と一緒になる事にしました。
今回あたしのわがままで、式より先に籍を入れようかと思ってまして。
それで、保証人をお願いしたいと思います。
あたしにとってこの家は第二の実家。おじさま、おばさまは両親のように思ってます。だから…」
「やっぱりね?言った通りでしょ、あなた?
りっちゃん、この人ね?言われる前から名乗りでるくらいにヤル気まんまんなのよ?式にも父親がわりに出るんだって息巻いててねぇ?」
「お、おい!余計な事言うなよ!
ま、まあ…うちにとってもりっちゃんはまなみと同じく娘と同じだと思ってるからな。頼まれなくても喜んで引き受けるよ?
星野くん…か?2人の空気を感じると何も言う事はないよ。りっちゃんを…よろしく頼む。」
「はい、きまり!それじゃあご飯にしましょ?」
(その夜はおおいに盛り上がりました。お父さんは飲み口が増えた事を喜び、いつになく上機嫌です。
律子も楽しそうに笑い、その輪の中にいます。
まなみはその輪を楽しそうに見つめて、律子の心残りを察します。
やがて宴席はお開きになり、子供達とまなみの父は眠ってしまい…)
りつ、たのしかったねぇ?
「うん、こんなに笑ったの久しぶり。おじさまも相変わらずでよかったわ。」
そだねえ?はりきりすぎて見てるこっちが恥ずかしいくらい…
「ふふ…ね、まな、後で散歩行かない?ちょっと夜風にあたりたいな…」
それなら、今行っておいでよ?まな、まだお母さんの片付け手伝うし。
ゆうすけぇ?りっちゃんにつきあってあげて?
(それなら僕が…と動こうとするしゅんくんを制して、まなみはごめんね?と目配せします。
たぶん2人で一つに溶けて、ゆうすけさんへの気持ちも吹っ切った。そんな顔をしてますが、律子はそれを誰でもないゆうすけさん自身に伝えたかったのです。
まなみでなければわからないくらいの小さな気持ち。しゅんくんもここでその想いを察します。
大丈夫。そうわかってても家を出る2人の姿に手を伸ばそうとしてしまいます。)
…ごめん、これはまなのわがまま…
今までのりつの…卒業なんだ…これから、あなたをさらにまっすぐ見据えて貰うため…不安なら…まなが付き合うよ?
(その大きな背中にぽふっと抱きついて、まなみは静かに話します。この夜だけは何が起こっても赦そう…そんな気持ちも感じ取れる話し方…
しゅんくんは、前に回したまなみの手をそっと握ってくれました。)
ありがとう…
【このまますんなりは終わらせませんよ?
まだまだりっちゃんには、幸せな気持ちでたくさん泣いてもらうんですから。
もちろんこのまま…ね?…どっちも…】
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