【1】
(楽しかった時間はあっという間に過ぎて、アタシ達は姫とまた会う約束をして別れます。
駅までの道すがら、何気なしにゆきと繋いだ手。いつもと違う温もりがじわじわと身体中に広がってきます。
ゆきはそのままあたしの腕に絡みついてきて…)
「…さやか?まなちゃんたち、綺麗になったねぇ?」
そうだね…アタシもアレ、冗談のつもりでこっそりりっちゃんの鞄にいれたんだけど、
まさかそれ使ってあんないい結果になるなんて…
「りっちゃんたち、何か言ってた?」
サイズ考えろとか、壊れちゃいそうだったよとか…もう散々…
でもね…?さいごに二人そろってありがとうって…
「ふふふ…あの二人らしいわ?…溶けて混ざり合ってまた二人に戻る…か。
あの二人の絆じゃなきゃできない事だよね?」
ア…アタシたちだって…負けてないと思うんだけどなぁ?
「…そうだね?」
(アタシ達、どこで繋がったんだろう…初めて会ったのは小3の時。
活動的なグループにいたアタシと、大人しいグループにいたゆき。繋がる接点などありませんでした。
おまけにずぼらなアタシに比べてきっちりとした真面目なゆき…何も持たずただ通り過ぎるはずだったのに…)
「ちょっと本田さん?どこいくの?」
あ…ゆきちゃんか…ごめんね?遊ぶ約束あって…
「ウサギ小屋の当番、本田さんとわたしなんだから、ちゃんとやってから…」
じゃあ、やったことにしておいてよ?一回や二回しなくてもうさぎは死なないよ?それじゃ…っ!
(さらりとかわして帰ろうとするアタシの手を、ゆきは物凄い力で握りました。はっとして振り返ると、鬼の様な顔をしたゆきが…)
「一回や二回って、どういうこと?
ほおっておかれたうさぎの気持ち、考えたことあるの?
本田さん、逆になって考えてごらんよ!自分がされたらどう思うの?
みんなで決めた約束守れない人…だいっきらい!」
…っ!うるさいっ!
「…きゃっ!」
第一なんだよ!ゆきちゃんはアタシのなんなの?友達でもないのに!
クラスで決めた事?男子なんてほとんど守ってないじゃない!
それなのにアタシにだけ言うのずるい!
それに…別にあんたに嫌われたって平気だから!
(カッとなったさやかは、ゆきを突き飛ばします。あっ…と伸ばしかけた手を引っ込めて、
自分だけなんで?と怒りをぶつけます。そして嫌われてもいい!と捨て台詞を吐いて教室から走り去ります。)
…なんだよ、あいつ!たかだかウサギの事だけで!
…でも…言い過ぎた…かな…それに…けが…してないだろうか…
あああああ!もうっ!
(ふと落ち着きを取り戻して、さやかは自分のとった行動を後悔します。きびすを返して学校に走っていき、ウサギ小屋へ…
そこには一人でみんなの分までウサギの世話をするゆきの姿が…)
あ…あれ?みんなは…?
「本田…さん?どうして…」
いやね…あんな啖呵切って飛び出したものの…心に何かひっかかって気持ち悪くなって…
「そう…やさしいんだね?本田さん…」
や・ややや!やさしくなんて…ないよ…それより…さっきは突き飛ばして…ごめん…痛かった?
「大丈夫…わたしこそごめんね…あんなに食って掛かって…どなりつけて…本田さ…」
…さやかでいいよ?アタシ、気づかなかったけど…これみんなゆきちゃん一人で?
「わたしも…ゆきって呼んで?ウサギのお世話、みんなめんどくさがって…
誰かに頼って傷つくならいっそ自分で…って思ってるだけ…
だけど、ほん…さやか…にまでそっぽ剥かれた時カッってなって…」
…すごかったよ…アタシちょっとひるんだもん…
ゆき…も、あんなに感情むき出しにできるんだって…ちょっと…ドキッってした…
と…ともかく!今日からアタシもお世話する!ちゃんと心入れ替えてやって、男子たちとっちめてやるんだから!
「ふふふ…おねがいね?」
「…さやか、さやか?」
あ、あああ…ごめん、思い出してたウサギ小屋事件の事。
「あ…さやかがわたしに一目ぼれしたあれね?」
ちがうーっ!ちょっとびっくりしてドキッってしただけ!
だいいち、告ってきたのはゆきからじゃないか!林間学校で同じテントになってさ?
一人で外で寝るの怖いって、アタシにくっついてきて!
なにも言わずにひとこと「好き」だけ…おまけに…キスまで…
あ…あれは…さすがに堕ちたわ…
「やあっぱり一目ぼれじゃないの?ほんださん?」
いいや、先に好きになったのはゆきちゃんだよ!
(ふたり目をあわせて笑いあいます。ふだん飲まないお酒を少し飲んでほろ酔いのゆきが、つまずいて転びそうになります。
それをさっと支えてあげました。突然の対応だったので、とっさに伸ばした手はゆきの胸を掴んでしまいます)
「っんあっ…」
あ…ごめ…
「…えっち…」
…いまさらぁ?
(アタシはゆきの手をひいて路地裏に…ゆきを壁に押し当てると、顎クイしてそのまま唇を重ねます。
身を縮こまらせてピクピク…と反応して舌を伸ばしてくるゆきの可愛さに、そのまま応えるように舌を絡めます。
ゆきをだきしめて頬をもって…くちゅ…ぴちゃ…と響く水音…)
「…んは…ね?さやか…わたし帰るまで我慢できない…」
うん…アタシもあの二人見てから…ずっと…ゆきを…
「ふふふ…そっか…じゃあ、わたしとおんなじだ…ね?寄り道していこ?」
そうだ…ね?
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