【5】
「…?あ…あたし寝ちゃってたんだ。
…ベッド…こんなすごいことになってるのによく寝られたものね…
…あら、まなまで…ふふ…気持ちよさそう…」
(律子の胸の中でいつの間にか眠ってしまっていたまなみ。すぴすぴ…もぞもぞ…律子を探して動いてくるのが可愛くて、その柔らかい身体を抱き止めます)
「あれ?まな指輪が…ああ、ここか。
さっき外してたっけ?なくさないうちにつけてあげよ…」
(まなみの左薬指に指輪を通します。ただそれだけなのにドキドキして…)
「…いまだけ…あたしはまなの…お婿さん…」
…今だけでいいの?
「うわあっ!お、起きてたの?」
指輪、はめ直してくれる少し前にね?りつの身体があったかくて気持ちよくて…ぽわぽわしてたとこ。
「まな…りつって…やっぱり夢じゃなかったんだよね?」
うん…どう?りつの中には、まなの半分はいる?
「いるよ…しっかりとね…これであたしも何も心配ない。どこまででも、高く、遠く…飛んでいけるよ。まなには?」
ちゃんと…いるよ?まなと一緒に、これからのりつを見守るためにね?
…そのシュシュ、あげる。もし遠くにいて苦しい時、辛い時にはまなだと思って?まなはりつのすぐそばにいつでも、どんな時もいるから…
「ありがとう…宝物にするよ…これが…あたしたちの指輪のかわりだね…」
りつ…
「まな…」
(もはやその気持ちを表すには言葉は邪魔な存在になっていました。お互い手を取り合って口づけをして…ついばむように何度も何度も…)
…がんばって…ね?
「うん、あたしの中のまなにも、いろんなもの見せてあげるから。」
楽しみにしてる…さて、そろそろお風呂して行かないと!
「あ、もうこんな時間!…あ…まな…その髪…」
ん?アップにしただけでしょ?
「…きれい…」
…へ?りつ?ちょ…あ…ふみっ…はみゅぅぅ…
また…また今度…ね?
…無理にこれで終わりだなんて決めると、心苦しくなるよ?たぶんこれから先はすれ違う方が多いけど…りつがどうしてもまなを欲しくなったら…またおいで?
「もう…あたしの決意が台無しじゃないの…
でも…そうする…あたしの中のまなが呼んだら…また…」
…やくそく…
(2人は小指を絡めて指切りをします。そして仲良くお風呂に入っている頃、ゆうすけさんたちは…)
「ゆうすけさん?そろそろお店行かないと…
え?まなたちが帰るまで待ってる?」
(みんなわいわいと支度を始め、移動しようとします。唯は支度を進めないゆうすけさんに気付きます)
「…あの子達がどんな想いでここを出て、何をしてるかはゆうすけさんだって気づいてるでしょ?
着替えるために戻ってくるかもしれないけど、今の2人の邪魔するのは野暮ってものですよ?ほら、早く支度して!あ、紀子さん?裕一くん連れて行ってあげて?ゆりちゃんは…大丈夫か…
…あぁ、星野さんまで…もう!ふたりとも!しっかりしなさい!」
(唯に尻を叩かれるようにして、2人とも重い腰をあげます。そして誰もいなくなった家に…)
ただいまぁ…あぁよかった。みんな行ってるね?
「たぶんしゅんいち、残るって言ってたと思うよ。」
それを言うならゆうすけさんだって。
で、唯さんが焚き付けてなんとか…
「うわあ…情景みえるわぁ…」
りつ?着替え持ってるの?
「うん、ここ来る時は泊まりのつもりでいつもいるからね?大丈夫!…やっぱり…あたしにはこれかな?」
そうだね?まなも…やっぱり…
「そうそう?まなもこれだよね?」
「…姫たち…うまくいったかなぁ…」
「?さやか、なんかあの2人にしたの?」
「ちょぉっとねえ?…あ、きたきた!
ひめー!おかえ…り…」
(遅れたお店に来たまなみと律子。やってきた2人を見て、一同言葉を失います。律子はいつものラフなシャツにデニム、まなみはゆるふわなマキシワンピ。まなみが髪をアップに結っているにしても、あまりにもふたり並んだ佇まいが自然すぎるのです。
まなみは律子の腕に抱きつくように腕を組み、その手は絡めて繋ぎ…距離が近すぎるのに、この間のような心配は全くありません。
しばらくみんなの動きがとまります。大将だけは静かに笑みを浮かべて手を動かして…その空気を破ったのは、ゆりなでした)
「ママが…可愛くてかっこいい…
りっちゃんは…かっこよくて可愛い…」
(それだ!と言わんばかりに頷く一同。その中で唯は一言…)
「…みやじま…さん?」
(思わず呟いて涙をこぼします。唯にはまなのその姿が、初めて自分に心を開いた中学の姿に重なったのです。)
ただいま…せんせい…
「…ばか!大人を泣かすんじゃないわよ!もう…」
ごめんね?まなとりつ…2人…お互い綺麗に洗い流して…一つになって…もう一度…2人になったの。
「ねえ、りっちゃん?りっちゃんの中に…ママがいるみたいなの…なんで?」
「そうだねぇ?いっぱいお話ししていっぱい仲良くなったからかな?…今はこれだけ…」
(まなみは律子のことを「りつ」と呼び、ゆうすけさんに向けた律子の笑みにはまなみの面影が…しゅんくんはハッとして、まなみを見ます。唯を胸の中で抱くまなみにもまた、律子がそうしている様な錯覚を覚えます)
「…ゆりちゃんが、高校生くらいになって…それでも、今日のこと覚えてたら…神戸に遊びにいらっしゃい?…その時になればわかること…全部教えてあげるね?」
「うん!…ママにギュウされてるみたい!きもちいいっ!」
「ただいま、しゅんいち…」
ただいま…ゆうすけさん…
(あらためて、それぞれの想い人をしっかりと見つめて一言。ただそれだけなのに、それが心にしみて…)
「すごいね、さやか…どうしたら…あんな風になれるかな?」
「…焦らなくていいよ。あたしたちは…これからだよ…ね?」
「うん…」
「さて!みんな揃った事だし、あらためて…」
「あ、まって!…ごめん、まな、ありがと。もう大丈夫よ?その前に…もう一つ、吉報があるの。…ね?大将?」
(唯の話に、大将に注目が…今じゃなくてもいいだろ?と、照れ隠しでそっぽを向きますが…やがて美由紀の方を見て…)
「あのな?…お前さえ良ければだが…
正式に、ウチの娘に…なってやってくれないか?
アイツが…どうしてもって聞かなくてよ…」
(え…?と、びっくりしすぎて表情を失う美由紀。立ち尽くして言葉を無くしていると、紀子がそっと寄り添います)
「よかったじゃない…みゆき…帰る家族が…またできるよ?」
「の…のんちゃ…わたし…わたしなんか…」
「みゆき!自信もって!」
(泣きそうになり、紀子から目を逸らし大将を見ます。おかみさんも出てきて、笑って頷きます)
「…はい…わたしで…よければ…」
「うん、それでいいの。早速だけど、呼んであげなよ?お父さんお母さんって…」
「おいおい、そんな急に…」
「わたし…お父ちゃん、お母ちゃん…がいい…」
(拍手が起こり、場が華やぎます。まなみと律子の為だった筈が、美由紀の為の宴席に…当の2人はそれぞれ、ゆうすけさんとしゅんくんの隣に座り、それぞれ手を握って「まあ、これはこれで?」と笑いかけます。まなみはゆうすけさんに寄り添い、頭をこてん…と預けて…)
ゆうすけさん…まなを信じて…支えてくれて…ありがとう…ね?
またこうして…隣にいれて…まなは幸せだよ…
【お待たせです!これで、通常運転に戻しましょう。】
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