僕がそっと部屋を出ようとすると「あ…星野くん?まなが別で寝るよ?」「…なぁんか、ぎこちないのよね?2人とも…よし!今夜はみんなで一緒に寝ようよ?」「えっ?ちょっと律子?ひょっとして…酔ってる?」「これくらいで、あたしが酔うわけないでしょ?それより、瞬一!布団を早く持って来て?」
と僕は1人で寝るつもりだったのに、2人に止められた上に少しお酒の入った律子のごり押しに負けて、来客用の布団を居間に運び、テーブルを片付け布団を敷くと…
まなみさんを挟んで3人並び「うちは色々と規格外だから3人くらいいけるかな?と思っていたけど、楽勝だったわ?」「まながちっこいからでしょ?」「それもあるよね?」「あーひっーどい!」「あはは…でもよくここまで1人で来たね?」と話ながら律子が照れて顔を赤くして俯いているまなみの髪を優しく愛おしそうに撫で、そっと顔をあげると
「…あたしがあの時怖かったのは、あんなになったまなにじゃなくて、あの目の色…あたしが以前、底まで沈んだ暗くて冷たいプールの水の色だったからなの…」と語っていたらまなみさんも思い出したのか、震え出すまなみさん。
僕と律子、どちらともなく自然にまなみさんを挟んで優しく抱いた。
やがて震えが治まり、冷たかった身体に暖かさが戻り…
律子とはまた違った女の子らしい柔らかさに僕がドキドキしていると
「ね?りっちゃん?
このまま、りっちゃんの枝を伸ばしてね?高く広く、そして遠くに…」と語るまなみ。
その言葉は僕が望んでいた言葉…
もしかしたら裕介さんも…
僕はもう一度まなみさんを見ると、律子が言っていた様に前よりもっと可愛く魅力的になったと実感した。
律子はまなみを何も言わず、その胸に抱きしめた。
そんな律子の頭を僕はポンポンと優しく叩き「よかったな?」と言った。
その夜はまなみさんを律子と一緒に抱いたせいか、変に女の子と意識したせいで、側でまなみさんの寝息を聞いてドキドキして眠りが浅くなってしまった。
だけど、あの悪魔みたいに暗くて冷たい黒い瞳の色をしたまなみの顔がフラッシュバックで見えて、律子があの日暗くて冷たいプールの水の色をしたプールに沈み込んでいた顔までフラッシュバックして甦り、改めて律子とまなみは魂の部分まで繋がっていると言ったゆいさんの言葉を実感した。
普段は天使みたいな娘でも、何か一つのきっかけで悪魔に変わるんだ、そうなってしまったら自分自身ではどうにもならない事を今回のまなみの姿で実感して、僕は裕介さんが不意がないからこうなったとどこかで思っていたが、それは間違いだった。
もう2度と思いをしないように、僕もまなみさんと律子を離そうとは思わず、まなみさんを受け入れよう…
せっかく2人同じ方向に向いて、前に進み始めたのだから…それにこのままの心境ではまた同じ事の繰り返しになってしまいそうだ!
僕もまた変わっていかないとな?
そんなことを思っているうちに眠りについていた。
翌朝、僕はまなみさんが起きていることに気づき「おはよう…まなさん。」って恥ずかしそれに声をかけてみた。
「おはよって…ほしのくん?今、まなって…!」と驚いたような嬉しいような顔をして言った。
「まなってなんて呼ぶのはどうかって思って…変かな?イヤなら…今まで通りにまなみさんって呼ぶけど…」と言うとまなみは首を振り、嬉しそうに何度も頷いた。
「それじゃ…まなさん、そろそろ律子を起こそうか?」と言って律子を起こすと、帰り支度をして、3人で裕介が待つ岡山へ…
そして裕介の家に着き、まなみが玄関を開けて「ただいま…」と言って入ると「ママーっ!お帰りっ!」とゆりなと裕一がお出迎えした。
「ゆりな!ただいま!裕一まで?いい子にしてた?」「ママだ!いつもの可愛いママだーっ!」ってゆりながはしゃいで言っている姿を見て、ママに可愛いって言うゆりなもゆりなだな…
ゆりなもまなみの変化に気づきいていたんだなぁと思うと僕がなんとも言えない表情で眺めていると、まなみが僕を真っ直ぐ見て「…裕介さん、ただいま。わがまま言ってごめんね?それとありがとう。」と玄関先で子供たちを思い切り抱きしめ笑顔を見せてから言ったまなみを見て…
よかった、まなみの両親から連絡はもらって、もう大丈夫って知ってはいたが、実際に会って見て本当に安心した。
これでもし、まだおかしかったら皆に悪いことしたところだったと思いながら「とりあえず、話は後だ、まずは中に入って?ほら、早くまなみ中に入って?」とまなみを促しながらリビングに入れた。
そこには高田君を通して、あの日のメンバーを集めてもらっていた。
「え?中?」と戸惑いながら促され中に入ると「えええ?ちょっと!みんなどうしたの?」と驚くまなみ。
「どうしたもこうしたも!健二から今日帰ってくると聞いて、さややゆき連れて広島から飛んで来たんだから!」「姫が大変だと聞いて、もう大丈夫なの?」クラスメートが周りを囲みまなみに声をかける。
そんなまなみが「その事だけど…みんなに話があるの…その前に美由紀ちゃん?」と言って、少し所在なげに立っていた美由紀に声をかけて
美由紀がまなみの方を向くと「今回はホントにありがとう。裕一の懐き方からわかるよ?」「いえいえそんな…?わたしの事…みゆきちゃん…って?」と驚いた様に聞くと「うん。あなたはもう、まなたちに深く関わってるからね?まなからのほんのささやかなお礼…」と言って美由紀をギユッとハグするとみんなの輪の中に
入り、隣には律子が、手を握っていた。
僕の真正面にまなみはいて、僕から視線を外す事なく話し出した。
「今回は、本当に迷惑かけました。
まな自身、あんなになっちゃうなんて思わなかった。狂ったまなを止めれなかった。
原因は…ただ待つだけに疑問を持ったから…
そしてりっちゃん…前にまなは、お帰りを言うために待つよって言いました。
でも、待つだけでどんどん進んでくみんなに取り残されて行くような焦りというか寂しさを覚える様になって…」と特に律子に向いて話している様に感じ、やっぱりまなみの真ん中には善くも悪くも律子がいるんだなぁ~まぁまなみらしい…なんて思って聞いていると「やはり、まなは待つの。でもただ待たない。
りっちゃんの…みんなの花はぐんぐん伸びた枝の先。まなの花は…根っこのそばの地面いっぱいに咲くの…一面にね?根っこを広くしっかり伸ばして、みんなに絡みついて離さずに。
…これが…これからのまな、りっちゃんや裕介さんだけじゃない。ここにいるみんなをまなの中に包んで抱きしめてあげたいの。
深く関わった、ここにいるみんな、有無を言わさずまなの根っこに絡まってもらいますからね?そのつもりで。」と言ったまなみ。
まぁ…何と言えばいいのか、まなみらしいと言えばまなみらしい考え…我儘で欲張りな考え。
そんなまなみにみんな口々に感謝を述べて集まる様子はとても華やかで、これまでの暗い雰囲気を一掃させた。
本当にまなみはみんなの(僕も含めて)明るい太陽なんだなって今回の事で良くわかった。
まなみの様子がおかしくなってから今までは太陽が沈んで暗い日々で辛かった。
でも今ではまなみも律子も互いに別の花を咲かす決意をした。
これでもう今回みたいな事は起きる事はないだろう。
仮に起きても、今回みたいな規模にはならない、もう大丈夫って確信的な感じを覚えた。
美由紀さんもゆいさんに背中を押され、さやさんらにも迎えられて、まなみが満面の笑みを僕に向けていて…
僕はまなみが前より可愛くそして芯が強くなったような笑みに思え、まなみにおかえり。と言う様にまなみに負けない様に笑顔で返した。
そして僕の側に来たまなみに「まなみの「おかえり」がこれまで以上に楽しみになったよ?
ても、まなみが疲れた時は僕が支えて、癒してやるからな?
まなみがこうして側で心からの満面の笑みを見せてくれる事で僕やりっちゃんが頑張ってこられていたんだから、もっと自信持って良かったんだよ?
でもこれからはここにいるみんなの根っこで花を咲かすって決めたんだから、今まで以上に無理はしたら駄目だよ?」と言ってみんなの前で抱きしめ、キスを…唇を重ねるだけのキスをした。
【まなちゃん…本当、我儘で欲張りな事を誓ったね?
確かにまなちゃんらしいね?】
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