ゆりなが律子の様に言うと「バカね…そんなことなんて事ないわよ?」「まなが元気なら、あたしはそれでいい…」ってゆりながまるで律子の様に語っているようで…
まなみは泣きそうになるのを堪えて無理に笑顔を作り「あ…あのね?愛知のおばあちゃんが具合悪くなっちゃったみたいなの…だから…だからママ…行かなくちゃ…ちょっとの間、ママ留守にするから…ね?パパ?」と振り返って言ったまなみのなんとも言えない表情をした顔を見て、胸を痛め…
僕は「わかった…」としか言えなかった。
それは側にいた唯さんも同じで、頷いていた。
そんな変な雰囲気を感じ取ったのか「…かえってくる?」とゆりなが不安気に聞くと「ばかね、当たり前じゃあない。ママは必ず帰って来るよ?約束…ね?」とまなみは答えた。
「うん!おばあちゃん、早く元気になるといいね!」「そうだね?ゆうすけさん、唯ちゃん…この子達、よろしくお願いします。」とゆりなと指切りしたまなみが頭を下げた。
翌朝、まなみは荷物をまとめて、家を出て行った。
僕は何も言えなかった自分が情けなく思ったが、ただ昨日ゆりなに必ず帰って来ると約束した事が、もしかしたらまなみはこのまま帰ってこないんじゃ?と思わず僕にとってひとつの助けとなった。
まなみが出て行って子供たちの面倒をみていると、どれだけまなみに甘えていたか、良くわかった。
自分ではそれなりに子供たちの面倒をみていたつもりでも、やはり子供たちにとってはまだまだだったみたいで、ゆりなによく叱られていた。
その口調がまた律子に似ていて…まなみのあの時の心情がどうだったかわかった気がした。
次の日は会社に有給を出してお休みをした。
部下の高田にだけは休みの本当の理由を話していた。
するとその夜、寿司屋の大将から連絡があり、唯さんから話は聞いた。嫁さんが戻って来るまでの間、うちの美由紀が子供たちの面倒を昼間みてやるよと…
唯さんが大将の店にあの事件の後、良く顔を出していたのは知っていたが、まさかそんな話になっているとは…
一旦は美由紀さんに悪いと思って断ろうとしたら美由紀さんに電話が替わり「あたしで出来ることならなんだって言って下さい。受けた恩は大きいですから、遠慮しないで頼って…」と言われて。
僕は大将の変わっただろ?って言葉を思いだして…「ありがとう、美由紀さん。それじゃ遠慮なく、明日から子供たちの世話をよろしくお願いします。」と言って電話を切った。
次の日、現れた美由紀さんはあの頃の面影はひとつもなく、魅力的な笑顔を見せて訪れた。
そして僕は一応前にまなみが子供たちの好みを書いたメモを美由紀さんに渡して後をお願いして、仕事に向かった。
ゆりなは人見知りしないタイプだけど、裕一は人見知りするタイプなので、多少気になってはいたが、いつもより早めに仕事から帰ると、美由紀さんがママとりっちゃんの友達ってわかったのか、いくつか懐いていて安心した。
愛知に行ったまなみからは定期的にメールが来ていた。
僕は風邪ひいてないか、裕一はお腹壊しやすいから気をつけて下さいとか、帰った時はお母さんに怒られたけど、お父さんには口裏を合わせてくれたらしい。
メールの内容も次第に変わり、まなは今、よく空を見る様になりました。
りっちゃんには、相変わらず連絡が取れません。
多分、星野くんが止めているだろうかと…
この空…りっちゃんと繋がってる…こっちにきた時は忘れてしまおうと思いました。
それだけの事をまなはしたから…
でも、やっぱりまなはりっちゃんが好き。
あんな醜い気持ちではなく、愛している。心の中に必要…だからこそ、あの娘がみんなが納得出来るこれからのまなを用意してから、帰ります。
その時は…抱きしめてください。そして…ちゃんとあなたを見つめて…またひとつになりたいです…
ときたメールには、僕は自然と涙が溢れて。
「まなみ、りっちゃんに対する気持ちは良くわかった。
きっとりっちゃんも、同じ気持ちだと思うけど…しかし星野くんの気持ちも僕はわかる。
最愛の人が一番信頼して愛していた相手にあんな事をされて、いくらりっちゃんが星野くんを説得しても、たぶん聞き入れないだろう…
そのためにまなからの連絡を切っているのだろう…
だけど、ちゃんとこれからのまなみを見せて行けば、必ず理解してもらえると思います。
そしてこの僕も、まなが律子にあの日した事は僕でも許せなかった。
律子の事は大切に思っているのはわかっていたけど、あの事件の後まなみが見た目の様子が変わってなかったから、僕は安心してしまった。
律子があんな風になっても、まなみには僕と子供たちがいるから大丈夫だと…
そんな思いが間違っていたと、今では思います。
まなみと律子の絆が深いのは理解していたつもりが、思っていた以上だった、僕や子供たちの事を忘れるくらい大切な存在に律子がなっていた。
僕は第一にその事に対して怒っている。
僕の事より、子供たちの事だ。
僕もまなみが出て行ってから知った事だけど、ゆりなが、あの頃のママ…なんだか変だった、ゆりなと裕一の事見てるようで、どこか違うこと見てる感じがしてた…なんて言われて、ゆりなにはその頃から愛知のおばあちゃんの調子がよくなかったんだよ?と言ったけど…
帰ってきたら、ゆりなたちにもおもいっきり甘えさせてください。
僕たちは家族なんだから、互いに何でも言って話し合い、支え合いものだと僕は思う。
僕たちは出会いから特殊だったから、よけいに何でも話し合いしなきゃダメだったと僕も反省しています。
本来なら会ってこんな話をすべきだけど、あの頃のまなみに言っても伝わらないと思い。
今のまなみになら伝えても大丈夫だと思い、メールでまずは伝えました。
まなみだけの新しいまなみに出会えるのを楽しみに待ってます。
くれぐれも身体にはご自愛ください。」
とメールを返した。
僕は一体いつからまなみの想いが歪んで行ったのに気づかなかったのだろう…?
過去から発生した事件でまなみが平気だった訳がない。
それを平気だったと思ってしまった自分も悪いが、あの頃どうしてもっと強く止めなかったのか?やはりどこかまなみに対して遠慮があったのか?
まなみに嫌われても良いって気構えがなかったのは確かだった。
僕も、ゆりなたちがいるのだから、これからはもっと家族としての時間をもたないといけないな、あまり仕事ばかり夢中になってはいけない事を今回の事で僕は学んだ。
子供たちがいかに大切な存在である事も認識出来た。
【まなみさん、長くなっても大丈夫!
まなみさんの文章は読みやすいから。
まなちゃんのあんな姿は読んでる僕も辛かった
今回はゆうすけの気持ちを書いてみました。
確かに問題はこれからですね?
しゅんくんが果たしてまなちゃんを赦せるのか?ってところかな?
昨日のうちに返すつもりが寝落ちして、こんな時間に返す事になりました】
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