はっ、はっ、はっ、はっ…
(神戸に戻ってからの律子は再び泳ぐための身体を作るために走り込みを毎日しています。
朝の気配に白い息。寒さはまだ肌を刺しますが、前を向いた律子には心地いい刺激です。)
はーっ!はーっ!はー…
サボってたからなぁ…まだまだだわ…
…まな…どうしてるだろ?
(水を飲みながら休憩して、ふと空を見上げる律子は、あれ以来連絡していなかったまなみを想います。すればできるのに、なぜかできずにそのまま…
何かを決めたように、律子はまた走り出します)
…しゅんいち、岡山いこ?あたし、まなに会いに行きたい!電話で一言も大事だけど、それよりも会って話したいから…
(その返事を渋るしゅんくん。律子はその手を握ります。)
あたし、知ってるよ?
しゅんいちが考えあって、あたしからまなを遠ざけてたの。絡まりすぎないように離してくれたんだよね?でも、今のあたしはもう違うから。
今度はまなにも、それを知ってもらって、2人でまた変わりたいの。
(決意の瞳はかたく、まっすぐにしゅんくんを見つめて射抜きます。ため息をひとつ大きくつき、やれやれと笑うしゅんくん。一緒に行くよ?と律子の頭を撫でます)
ありがと。じゃあ、ゆうさんに連絡しておくわ。
…?まなはね…何となく今は話しにくいな…恥ずかしくて…ね?
…え?りっちゃんがくるの?
いつ?
今までどうしてたか、何か言ってた?
(あれからのまなみは、やはり普通に生活する中に、あの冷めた瞳が時折出るような状態でした。
ゆうすけさんから律子の事を聞くと、ゆうすけさんの腕を掴んで揺さぶりながら、矢継ぎ早にいろいろ質問をします)
りっちゃん…りっちゃん…りっちゃんに会えるんだ…ようやく…会える…
(嬉しそうに律子の名前を何度も呼び子供のように笑いますが、その瞳はまたあの暗く冷たい瞳…
ユラリ…あの瞳で微笑みを向けられて、ゆうすけさんは背筋が凍る思いがします。
そして約束の日…)
「まな…ただい…うわっ!ちょっと!」
りっちゃんおかえり!おかえりっ!
ずっと声かけなくてつらかった!怖かった!
何かあったの?大丈夫なの?ねえ?ねえ!
「ちょっ…落ち着きなさい。あとでゆっくり話すから。まずは…あがらせてくれないかな?」
あっ…ごめんね?
(律子はくっついて離れないまなみと一緒にあがります。ゆうすけさんに笑みを浮かべて軽く会釈する様は、あれから一皮も二皮もむけて大人の女性になったとゆうすけさんに思わせます。
律子はふとした拍子によろけます。しゅんくんが支える為に手を伸ばした時です)
…だいじょうぶです…
(小さく呟き、その手から律子を離すように抱きしめるまなみ。そしてしゅんくんも、まなみの暗く冷たい「あの瞳」を目の当たりにします。しかもその視線の狙いが自分に向けられるように鋭くて…
一瞥するように目を瞑り、律子を向くまなみの瞳はいつもの恋する乙女のように…)
ほら、りっちゃん!
お茶しようよ?りっちゃんの好きなお菓子、用意してあるからさ?子供たちも待ってるよ?
お話、ゆっくりでいいから聞かせて…
(今一度手を伸ばしたしゅんくんのその手を、ゆうすけさんは止めます。そして、話があるから外に出ようと目くばせします)
なに、ゆうすけさん。
散歩がてら買い物?あまり遅くなっちゃダメだよ?
(いつもなら、ほしのくんも来たばかりだからゆっくりさせて?と言われるはずが、しゅんくんの名前すら出さずに送り出します。律子もまた、2人を見送る瞳の暗さを見抜き、息を飲みました。)
「し…しゅんいち?ごめんね、着いたばっかりで。
ちょ、ちょっとゆうさんと…おねがいできる…かな?」
(おかしい…おかしすぎる…
見た事のないまなみの瞳に怯えて戸惑いの顔をして、律子はしゅんくんを気遣います。
とにかく、まなみはしゅんくんをいない人のように扱うのです。まわりには明るく振る舞いますが、そのテンションも異様に高く、和やかながらピリピリした空気が漂います)
『まながおかしい。
ゆうさんに何か心当たりないか、聞いてみてください』
(律子はお茶の支度をするまなみの目を盗み、しゅんくんにメールしました…)
【おまたせです。
今回のまなちゃん、少しひく位心理的に怖い方向に振ります。とはいえうまくできるか分かりませんがね?】
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