おまたせー!のんちゃん、元気になったよ?
『みなさん…すみませんでした。ご迷惑を…あっ…』
(気持ちは前に向いても、まだ体力は戻っていません。ふとした拍子によろけた紀子は、とっさに動いた高田くんに抱き止められる形になります)
『あ…ご、ごめん健二…つまづいちゃった…
も…もう大丈夫…だよ?』
(先程感じた紀子の小ささを、身体全体で確かめます。柔らかさはまなみと変わらないくらい…思わずキュッ…と抱き締めてしまうと…)
…おやおやぁ?
「おやおやぁ?」
(またも茶化すようにニヤニヤして2人を覗きこみます。先程とは違い、紀子を少しでも元気にさせるため…慌てて離れた紀子を、まなみはギュウウっと抱きしめます)
それじゃ、まなたちは女子会その2をしてきまーす!
…覗いたら怒るからね?
(はしゃぎながら紀子の背中を押すように居間を出て行くまなみの足は、気づかれないくらいですが震えていて…)
…さて…のんちゃん、とりあえず横になりなよ。
『うん、ありがと…?りっちゃん、どうしたの?』
「あ…ううん、なんでもない」
(律子は紀子の鞄に違和感を感じて、中を見ます。案の定…出てきたのは盗聴器。どんどん思い出すあの事件の記憶。吐きそうになる嫌悪感を堪え、タオルでぐるぐる巻きにして聴こえないようにします)
『…さ、何から話そうか…
まずは…まなちゃんがいなくなって、りっちゃんも篭りがちになっちゃった所からかな?
旧5の3のメンバー全員、何かしら傷を負ったんだ。健二は人を信じられなくなり、わたしは…』
(ベッドに横になり、天井を見上げながら紀子は淡々と話し出します。)
『あのクラスさ?女子みんな粒揃いで可愛い子ばっかだったでしょ?学年の可愛い子、綺麗な子がみんな集まったって言われてたくらい』
ああ…確かそんなこと…りっちゃんは綺麗系の筆頭だったね?
「……」
『あの女子の中じゃ、わたしは埋もれちゃってて…ほんとは見て欲しい人はいたの。たとえその人が他の子しか見てなくてもね…
風の噂で、トイレや水泳の着替えを盗撮されたって聞いて…ほんとは気持ち悪いって思うはずなんだけど…わたしは、どこか満たされた…おかしな気持ちに全身を支配されたの。形はどうであれ、ちゃんと見てくれたって…そしたら…お腹の奥が熱くなって…』
「のんちゃん…でもそれは…」
『わかってる!それがわたしが負った傷…あんなおかしな状況の中で…見られたという事実が性的に歪んじゃって、そういう事を求め出しちゃったんだ…』
(律子はズキ…となります。覚えのある記憶。ゆうすけさんとの情事がまさしくそれなのです。胸の痛みに顔を歪める律子。まなみは律子の肩をそっと抱きます)
…りっちゃん…もう、大丈夫だから…だからそんな顔しないの。
「うん…うん…」
『みんなやっぱりいろいろあるんだよね?あの事はそれだけショックが大きすぎたんだ。それでも、時間薬でみんなそれぞれ立ち直ろうとする時期…わたしは…関根に掴まったの…
おんなじテニス部でね?初めは優しくて良い先輩だったんだ。表向きはね?中身は自分勝手なドロドロな欲が渦巻いてて…気づいた時には遅すぎた…』
「のんちゃん…喉乾いたでしょ?お茶持ってきてあげるね?まな、ちょっとまってて?」
(そう言うと、何も言わずにまなみの頬にキスをすると、部屋を出て行きます。例の盗聴器を握りしめて…)
「ゆうさん、これ…のんちゃんの鞄から…」
(声を拾わないように小声で、盗聴器を見せます。驚く一同。もはやここまで来ると犯罪です。
しゅんくんは律子を見ると…まるで鬼の首を取るような険しい顔をしていました。そして、盗聴器に向けて…)
「関根!どうせこれ、ニヤニヤしながら聴いてんでしょ!
あたしの大事な友達を傷つけて苦しめて!
あたしはあんたを絶対に許さない!どこにいようが何をしてようが追い詰めて、必ず罪を償わせてやるから!覚悟して待ってなさいよっ!
あんただけは…あんただけは!必ずあたしが!あた…っ槌」
(これ以上はダメ!としゅんくんは盗聴器を取り上げて壁に叩きつけると律子を固く抱き締めます。フーッ!フーッ!と荒い息を繰り返して、堪えていた涙を大粒にしてボロボロこぼし始める律子。しゅんくんの胸の中で大声をあげて泣きじゃくります。その泣き声はまなみたちの耳にも…)
…続き、聞かせて?
まなはね?あの事件の結果、クラスみんなに助けられたんだって…思ってる。
その助けてくれた子が同じような事で傷ついて苦しんでるなら…まなたちは…何を犠牲にしても必ず助けようって…りっちゃんと誓ったんだよ?
実は…さっきからまな…ずっと怖くて…もしかしたら…あのままされてたら…今日ののんちゃんと同じようにボロボロにされてたかもって…思ったら…から…からだ…が…いき…が…
(無理もないです。あの忌まわしい事のあった土地で、記憶を揺さぶられて掻き回され…ヒュー…ヒューと息がおかしくなり始めるまなみ。紀子は慌てて起き上がるとまなみを抱きしめます。)
…だいじょ…ぶ…だから…もう少ししたら…おち…つく…よ?だ…から…みんなには…いわ…な…いで?
はあ…はあ…はあ…せき…ねって…人…ぜったい…許さない…のんちゃんを…きずつけた…りっちゃんを…泣かせた…ぜったい、ぜったいに…許さないん…だから…
だから…みんなで…みんなでやっつけよう…ね?
【あたし的に関根は、やる事いきってやるけど、ホントは小物的なイメージがあります。だから、ゆうすけさんが思うような、みんな辛い事にはならないんじゃないかな?
のんちゃんの過去は、少しずつ進めますね?】
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