(抱いてもらおうと深く寄りかかり、目を瞑り唇を差し出すと、しゅんくんは肩を両手でしっかりと掴み、今回の旅行の本当の目的を話してくれました。)
やっぱりね…そんな事だろうと思ってたよ?
でもね、しゅんいち…今回ばかりは…もう無理かもしれないんだ…
…あたし…壊れちゃったみたい…なの…
(表情は変わらず穏やかに微笑みます。最愛のしゅんくんの話も、穴の空いた桶に水を流すように、今の律子には響きません。まるで微笑む事以外全てが欠落したかのような様子と一言に、しゅんくんはゾッとします。)
…まな?
それは無理だよ?あの子とは、魂の根っこのとこで繋がってるみたいな感じがするほど近いの。
だから…たぶん今もまだ…あの子泣いてるのがわかるんだ。あの子もまた…あたしが壊れちゃったのに気づいてる。
それにね?守られてたのはあたしの方。孤独にならないようにしてくれて、泳ぐきっかけを与えてくれて、ずっとそばにいてくれて…
しゅんいちはまなのせいだって言ったけど、それ…正解だよ?
(それなら…と言おうとするしゅんくん。抱きしめようとするその手を、律子は軽くいなします。)
それでも…それがわかってても…
しゅんいちっていう、優しくて素敵な、生涯をずっと寄り添える人がいても…
あたしはあの子を離せない。離したくないんだ…
今のまんまじゃ、しゅんいちもまなも、お互いを誤解してる。
あの件は、前にも言った通りみんなが悪いの。
まな、のんちゃん、さやか、ゆきちゃん、そしてあたし…それぞれに後悔と自責の気持ちがあるから、だからごめんは一度にしようって決めたんだ。
(いなした手をとると、律子は自分の頬にあてます。きゅっと押し当てるとすりすりとほおずり…)
あったかい…おっきな手…
…ありがとね?本音、聞かせてくれて。みんながみんなあの結末で納得できるわけないもんね?
しゅんいちがあたしのこと、大事に大事に思えば思うほど納得できずにモヤモヤする気持ち、よくわかるよ?逆だったら同じことするもの…
…わかった。
まなのことも含めて、掘り起こされた過去の恐怖に…ちゃんと向き合ってみる。
この旅行で、これからの事を決めようと思う。
それで、あたしがどんな答えを出したとしても…
この手は…離さないでね?ずっと…温もりが…届くところにいて…それができるのは…あなたしか…いないんだ…お願い…
(そう言って笑う律子。その微笑みには心なしか、僅かでしょうが前向きな何かが宿ったような気がしていました。そのまま2人は長い長いキスをして…はにかんで微笑む律子は、ゆっくりと静かにしゅんくんの胸の中に収まり、眠りはじめました…)
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