律子の携帯の電源をいつもの様に落として、律子ちゃんから遠ざける様に置いて僕はどうしても抜けれない仕事に向かった。
まさかその前に律子ちゃんが携帯を留守録にしていたとは知らずに…
まなみさんから何度も連絡があったけど、その都度以前と同じように冷たく対応していた。
その対応が良いとは思ってないが、律子ちゃんの事を考えるとまなみさんに会わす訳にはいかなかった。
だけど、仕事から戻ったら律子ちゃんの様子が少しおかしい…携帯を律子ちゃんの隙を見て、確認したけど、おかしな点はなかった。
一抹の不安を抱えながらも律子ちゃんは以前みたいに吐くようなことは少なくなったけど…
僕を向ける穏やかな笑顔が、何か虚ろに見えてやはりまなみさんに会わす方が良いのか?
でも会えばまたあの時のフラッシュバックが…
僕では律子ちゃんの心の傷…抉られた心の傷を治す事は出来ないのか?
散々悩んだ結果、僕は律子ちゃんに2人の思い出の場所、札幌行きの提案をした。
その頃にはテレビでも律子ちゃんのあれほど盛り上がっていた話題は無くなり、他の選手の活躍の話題にとって変わり、話題にも昇らなくなり、一見は平穏な生活に戻った様に思えたが…
律子ちゃんからも水泳の話も出なくなり、まなみさんの事も触れなくなり…このまま僕の奥さんになってくれるのか?
そんな淡い期待もしてしまうくらいだったけど、今の律子ちゃんは穏やかすぎてまるで全てを無くして、空っぽになっているみたいで…
やはりこのままではいけない、律子ちゃんの心の傷とちゃんと向かい合わないといけないと思って2人にとって思い出の場所、札幌で一緒に思い出の場所を巡れば何か見つけられるかも?と思い切って誘った。
「えっ?さっぽ…ろ?
…なに?突然。わたしならもう大丈夫だよ?
最近は吐く事もなくなったし、心が乱されらることもめったになくなったから…」と言う律子ちゃん。
いやいや…その状態が良くないんだって!と思って「そうだけど、結婚する前にもう一度思い出巡りをしたいなって、思って…だからどうかな?」と律子ちゃんに気を使わせない様にして聞いたら「え?結婚前に?もう一度思い出巡りしたいの?
そう…だね?そうしようか?」と言ってお守り代わりにこのところずっと持っていた律子ちゃんのお母さんの形見のブローチをギユッと握ってあの時と同じような笑顔を見せた。
そんな笑顔を見て、胸の奥がギユッと締め付けられた感じがして「それじゃ、早速予約を入れるね?今回はゆっくり船旅で行こう?フェリーでさ?」と手を握って言った。
律子ちゃんの両親の時代ならきっと同じようにフェリーで行ったと思うので、出発した場所は違うかも知れないけど、出来るだけ律子ちゃんの両親と似た状況で移動したいと思っていた。
ただその一方でまなみさんとも一度ちゃんと話をしないといけないと思っていたが…律子ちゃんが抉られた心の傷が癒えてからと思っていた。
今のままではまなみさんと会った時、今まで通りに接する事は出来ない。
律子ちゃんの心を抉られた原因を作ったのがまなみさんの行動のせいだと僕は思っているからだ。
【まなみさんの展開の方が良かったかも?
でも、今回は頑張ってみます!】
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