唯さんらと話をしている傍らで、さやかとゆきさんがまなみと律子に…
「はい、これ。まなちゃんとりっちゃんに…」
「これって…」「そっ、姫とは一緒に卒業できなかったでしょ?だからのんちゃんと高田に相談して、声かけるだけかけたみんなに、寄せ書きを書いてもらったの。
で、りっちゃんの方はこれからの活躍に期待を込めて、頑張れ王子様バージョンで書いてもらったんだ。」「のんちゃん…さやちゃん…ありがとう…」と涙ぐむまなみに対し「泣くのはまだ早いよ、姫?真ん中の下、1人分空いているでしょ?」「さやか、もしかして…」「りっちゃん正解。2人それぞれに最後ひと枡書いてくれたら完成なの。」と言って色紙を差し出すさやか。
「ええ?りっちゃんの目の前でって…恥ずかしいよ。」「あたしもちょっと書きずらい…かなぁ…」「じゃあお互い背中合わせでね?」「のんちゃんまで…そこまで言うなら…ね?りっちゃん…」「そう…だね…」「そうだよ?せっかくこんなふうにクラスの主要メンバーが顔を揃える機会何てなかなかないんだし…」と高田君まで言って薦めてきて。
まなみと律子は背中合わせで互いの寄せ書きに向かい合って、考えているうちに背中が合わさり、どちらともなくもたれかかり…互いの事を想いながら考え、2人同時に書き始めるので、ここまで阿吽の呼吸で書き始められるものなのか?と感心しながら見ていると…
「できた!」「あたしも…」「じゃあお互いに渡してあげて?」
「…まな、卒業、おめでとう…」「りっちゃん…これからもよろしくね?」と言って互いの想いを読む2人。
先に泣きだした律子を心配したしゅんくんが肩を抱くと律子はしゅんくんの胸の中で静かに泣く律子。
そこには『あなたが見ている空は、どんな空ですか?
宮島まなみ』と一言書かれてあった。
僕は以前、律子からまなみとの出会いを聞いた事を思い出し…教室の窓からいつも見上げていた空、このまま消えてしまいたい。そう思って見ていた空がまなみと出会い、気持ちを重ね、あの事件の後、一時期離れていても心はずっと繋がっていて…見上げる空は離れていても同じ空。
そして今はただ前に進む為に見上げる空…
「まな…反則だよ…宮島の名でなんて…」
「えへ…へ…りっちゃん…りっちゃん…」とこらえきれず涙を流すまなみ。
僕もそんなまなみの傍らにそっと座り、優しく手を握りまなみの方に書かれていたのをみんなで見てみると『いつまでも、あなたの王子でいさせて下さいね?
星野律子。』とあった。
あえて星野と書いた律子に「えっ?」としゅんくんが驚いていると「いいでしょ?」と呟き微笑む律子。
「いや…まぁ、悪くはないけど…」としゅんくんが嬉しいような、でも記念の色紙にまなさんはわざと宮島と旧姓で書いたのに律子ちゃんが…と困惑の色を見せていたが、まなみさんは小学生の頃の律子に向けて、でも律子ちゃんはこれから先に向けて…と思ったら納得できて微笑み返した。
すると2人はどちらともなく抱き合い、泣き合っていた。
やはり2人は特別な絆で結ばれているんだな、僕にはそんな相手、まなみ以外いないから…羨ましい…そう思って僕は見ていた。
その様子を見ていた美由紀が「いいなぁ…アタシにも…できるかな?」と呟く。
「…美由紀しだいだよ?…ただあの2人は根っ子のふかぁいところで繋がっているから、特別なんだけどね?」と唯が答える様に言った後…
「いいわねぇ?羨ましい…私も可愛い妹達の同期会に混ぜてもらうね?」と言ってまなみに抱きつくと「…ゆいちゃん?酔ってる?…ああ!こんなに飲んじゃって!」と唯の座っていた席に転がる空いたコップを見て言ったけど、唯がまなみの胸とか脇を擽る様に触り「や…ちょっと…変なとこ触んない…でよぉ!」と身体をくねらしながら抗議するまなみ…
「唯さん、いくらお世話になったとは言え、まなみは僕のモノだから…」と僕がまなみを唯さんの手から放す様に抱きよせたりしているうちに大将も美由紀さんも加わり、笑いの絶えない楽しいひとときを過ごした。
そして…宴もたけなわになり「それじゃあ、またね、まな…みんな」「うん、りっちゃんも頑張ってね!」と大将の車に乗ったりっちゃんとしゅんくんを見送った。
瞬一
律子ちゃんと駅に着くと新幹線ホームで新幹線を待っていると律子ちゃんが「…瞬一?今日ずっと浮かない顔してたけど、どうしたの?」と下から覗き込んで聞いてきた時、律子ちゃんが持っていたペットボトルを落としてしまい
「あ…落としちゃった…」と言って律子ちゃんがわざわざしゃがんで拾った。
手を伸ばせば届く距離なのに…しかも一瞬、躊躇う様子をみせて…
「…そんな事ないよ…」と言いかけた時だっただけに僕は言葉を一瞬失ってしまった。
やはりまだ抉られた心の傷は治っていなかった…みんなの前では、特にまなさんの前では平気なふりをしていたのだろう…
まさか律子ちゃん、自分でも抉られた傷に気づいていないのか?
それはないだろう…でも今日のみんなと過ごした時間、特にまなさんといる時はそんなふうに見えなかったのも確か…と色々思ったけど
「そんな浮かない顔してたかなぁ?自分じゃ良くわからないよ?」と言ってとりあえずこの場は誤魔化してみることにした。
【お待たせしました、まなみさん。
自分で感じた違和感ながらこの先どうりっちゃんを癒して行くか…悩んでいます。】
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