「はい、これ。まなちゃんとりっちゃんに…」
…これって…
「そ、姫とは一緒に卒業できなかったでしょ?だから紀子と高田に相談して、声かけられるだけかけたみんなに、寄書き書いてもらったの。
で、りっちゃんの方はこれからの活躍に期待をこめて、がんばれ王子様バージョンで書いてもらったんだ」
のんちゃん…さやちゃん…ありがとう…
「泣くのはまだ早いよ、姫?
ちょうど真ん中の下、1人分空いてるでしょ?」
「さやか、もしかして…」
「りっちゃん正解。2人それぞれに最後ヒトマス書いてくれたら完成なの。」
ええ?りっちゃんの目の前でって…恥ずかしいよ。
「あたしも…ちょっと書きづらい…かなぁ…」
「じゃあお互い背中合わせで…ね?」
ゆきちゃんまで…そこまで言うなら…ね?りっちゃん…
「そうだ…ね?」
(全員に絆されて、まなみと律子は背中合わせでそれぞれの寄せ書きに向かいます。考えているうちに2人の背中が合わさり、どちらともなしにもたれかかり…お互いのことを想いながら考え、そして2人一緒に書き始めました。)
…できた!
「あたしも…」
「じゃあお互いに渡してあげて?」
「…まな、卒業、おめでとう…」
りっちゃん…これからもよろしくね?
(お互いの想いを読み、2人とも目頭を熱くさせます。先に泣き出したのは律子。その様子を心配したしゅんくんに肩を抱かれて、胸の中で静かに泣きます。そこに書かれていたのはただ一言…
『あなたが今見ている空は、どんな空ですか? 宮島まなみ』
…まなみと知り合う前までは、どこかに消えてしまいたくて見ていた空。まなみと知り合い、気持ちを重ね、だんだんと同じ空でも見方が変わってきました。今はただ…前に進むために…)
「まな…反則だよこんな…宮島の名前でなんて…」
えへ…へ…ぐすっ…りっちゃん…りっちゃぁん…
(堪え切れずにまなみも涙をこぼします。そんなまなみの方には…
『いつまでも…あなたの王子でいさせてくださいね? 星野律子』
…まなみと知り合い世界が広がった律子。気がつくといつもまなみを目で追っていました。誰にでも優しく、明るく笑うまなみ。他人との距離が近くてどこか危なっかしいまなみを、自然と守りたいと心に決めて。お互いそれぞれに幸せな家庭を見つけても、やはり律子にとってまなみは一生かけて守りたい大事な姫。それを今回の事で余計に実感したようです。迷いのない優しい字、そして律子の方はあえて星野の名前を使い…みんなで見ていて「えっ?」と驚くしゅんくんに、「いいでしょ?」とつぶやいて笑います。
2人はどちらともなしに抱き合い、泣き合います。
それはその場の全員を暖かくさせる歓喜の涙。)
「いいなぁ…アタシにも…できるかな?」
「…みゆきしだいだよ?ただあの2人は、根っこのふかぁいところで繋がってるから、特別なんだけどね?」
「いいわねぇ?羨ましい…私も、可愛い妹たちの同期会に混ぜてもらうわ?」
…ゆいちゃん?…酔ってる?
ああ!もうこんなに飲んじゃって!や…ちょっ…変なとこ触んない…でよぉ…もうっ!
(そこからは全員入り混じっての楽しい騒ぎになりました。大将もみゆきも心から笑い、そんな楽しい時間はあっという間にすぎて…)
「それじゃあ、またね、まな…みんな」
うん、りっちゃんもがんばってね!
(宴たけなわとなり、解散になりました。律子たちはそのまま神戸への帰途につきます。駅まで大将に送ってもらい、ホームで電車を待っていると)
「…しゅんいち?今日ずっと浮かない顔してたけど、どうしたの?」
(下から覗き込んで律子は聞きます。その時持っていたペットボトルを落としてしまい…)
「…あ、落としちゃった。…っしょ…と…」
(そのまま手を伸ばせば届くのに、律子はわざわざしゃがんで拾います。しかも一瞬の躊躇いの動きがあった事を、しゅんくんは見逃しませんでした)
【おまたせです。
結婚式を前に、しゅんくんの憂いの通り抉られた心の傷が癒え切らないりっちゃんはスランプに陥ります。先端よりも、前のめり等でお尻が頭より高い位置になると無意識で反応してしまっているのです。
これが水泳に響いてしまって…
でもちゃんとしゅんくんに癒してもらって調子を戻して、そして式にいきたいです!】
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