「人体模型は新校舎の理科室、呪いの鏡は旧校舎のどこかにあるみたいです」
俺は唯たちに対し、人体模型と呪いの鏡とがそれぞれ別の場所にあることを伝える。
じゃんけんの結果、俺と唯が理科室の人体模型を調べることになり、ヒナと未来が呪いの鏡を調べることになった。
「呪いの鏡は旧校舎のどこかにあるみたいですが、場所が定かでないんですよね…パッと調べて帰りたい未来さんにはすまないけど、頑張って探してください」
口調は丁寧だが、内心では下衆な笑みを浮かべていた。
旧校舎は鏡の魔力に惹き付けられた妖怪の巣窟となっていて、呪いの鏡に辿り着く前に妖怪たちと出くわすことだろう。
妖怪を一度見てみたいと言っているヒナにはちょうどいい。人外の快楽をしこたま浴びることになるだろう。
「では、またこの場所で落ち合いましょう」
ヒナたちと分かれ、俺と唯は懐中電灯を片手に理科室へ向かう。
理科室の鍵は既に開いていた。
理科室の扉を開くと、室内には甘く濃い香りが漂っている。
気だるさを覚えるほど甘ったるい香り。
気化した媚薬が部屋中に充満しているのであった。
「化学部が今日アロマ作りに失敗したらしくて、匂いが残っているんだと思います」
唯に嘘を吹き込んで誤魔化す。
理科室の後方へ進み、人体模型が置いてあるはずの場所を懐中電灯でゆっくりと照らす。ところが、そこに人体模型の姿はなかった。
「おかしいですね…今日の日中はここにあったのですが…先生がどこかに移したのか、それとも自力で…」
話しかけた途端、物音がしたので口をつぐむ。
重たいものが動くような音…
その音は俺でも結でもない、何かが発していた。
唯に緊張感が走り、一瞬にして理科室の空気が張り詰める。
「音は資料保管庫の方から聞こえましたね…行ってみますか?」
資料室保管庫はホルマリン漬けの標本や剥製が並び、生徒はあまり近づきたくない場所であった。
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