広瀬が「白鷺屋」を知ったのは偶然部下の仲間たちが訪れたのが始まりだった。
美人の女将とその娘達が働いている。と。
広瀬は自分自身で確かめようと、お客を装い一泊した。
笑顔が素敵で色気のある女将。
まだ若く多少無愛想なところもあるが母親譲りの美貌を持つ長女。
それとは対象的に色気はまだないが活発に働く次女。
そして料理長を務める旦那。
すぐに乗っ取る計画を立てた。
まずは旦那を広瀬が経営する違法賭博に勧誘した。
最初こそ数百万円勝っていた旦那だったが、それも罠。
みるみるうちに負け始め気づけば借金は数千万円にまで上っていた。
そこで旦那に借金を返したければ失踪した振りをしろと提案した。
広瀬の指示に従い旦那は手紙1つ残して失踪を装い、今は軟禁されている。
さらに広瀬は「白鷺屋」の経営を追い込むべく予約の妨害を始めた。
ようやく準備が整い、電話を掛けた。
「間違いではありませんよ…確かにこちらの借用書には女将である百合さんのハンコがありますから。とにかく電話では説明しにくいのでお邪魔しますね。どうせ予約もなくて暇でしょう」と、広瀬は一方的に電話を切った。
それから程なくして広瀬と部下の山下が姿を現した。
「先程お電話させてもらった広瀬金融の広瀬と申します」
2人共スーツ姿で丁寧な挨拶に「闇金」にありがちなイカツイ風貌ではなく、紳士的な挨拶に少し安心する女将。
女将は客室へ案内するとテーブルを挟んでお互い座った。
広瀬は早速、テーブルに借用書を置いた。
「確認頂けますか?」
確かに借用書には女将の名前とハンコ。
そして借金額は「1億円」となっていた。
借金額に驚く女将に「旦那からは利子を含め一切の返済がなくてですね。我々としても困ってるんですよ。いくら探しても旦那はどこへ行ったか…それと、一応この旅館の価値も調べたんですが…今売却しても五千万にしかなりません。つまり、住処も職場も失い残りの五千万の借金を背負って生きていくか…」
と、女将を追い詰めながらもう1枚の書類を見せる。
そのタイトルには「奴隷契約書」と、書かれていた。
「我々がここを七千万で買い取る。残りの三千万は女将の身体で払って貰う。女将も娘さん2人もここで暮らせる。こんないい条件はないでしょう。今なら女将1人で済みます。娘さんにはわからないように。それから旅館の予約も再開させることを約束します。さぁ、どうしますか?」
女将は改めて奴隷契約書と書かれた文書の内容を確認する。
「女将の身体は我々、広瀬金融に委ねる。いかなる命令も従わなければならない」
女将にとっては信じられない内容だった。
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