百合「行ってきまーす!あ、今日部活あるからお手伝い少し遅くなるね、ママ」
京花「わかったわ、遅くなってもいいから、部活頑張ってきてね。」
ほんわかした朝、日常。
制服姿で登校する次女を見送り、旅館の営業開始準備を始める。
長女の穂花はまだ寝ているのだろう、朝食にラップをかけておく。
引きこもりがちなのは心配だが、部屋からは出てきて、家の中なら普通にしているし、そこまで心配はしていない。
「はあ…、もう貯金が結構…。どうしてお客様が急に来なくなったのかしら…。」
百合が出かけ、玄関前を掃き掃除しながらため息をつく。
急に予約が入らなくなり、赤字の週が続いていた。
元々予約はひっきりなしだったが、老舗故に維持費もかかり、貯金はそれなり程度。
このまま赤字が続けば…。
もう一つ深いため息をついた時、固定電話が鳴り響いて…。
「はい、白鷺屋でございます。…、金融…会社様ですか…?」
予約の電話かと思ったが、電話口の相手は想像もしていない金融会社の人で…。
「あの、えっと…、何かの間違いではないでしょうか?旦那は借金をするような人では…、それに、しばらく前から行方がわからなくて…。」
何かの間違い、そう口にしたものの、急に失踪した事実がジワジワと焦りを生み出す。
額にジワリと汗をかき始めた。
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