道場を真っ白に染め上げるほどの雪の礫が、魔人に叩きつけられる。
痛みを感じる間もなく魔人はふたたび全身が凍結する。
氷鳥は氷結した魔人の真上に飛び上がると、魔人に一直線に落下し激突する。
魔人の肉体はその衝撃で爆音とともに砕け散る。
ナツメにも必殺の手応えがあり、技への絶対の自信もあり、勝利を確信した。
尚も反撃を警戒して、ナツメは戦闘態勢を解かず、
警戒した面持ちで周囲に気を配り続けている。
吹雪が消え、冷気の霧が晴れていくと、無惨に破壊されて
道場に巻き散らかされた残骸を目の当たりにする。
何も起こらない。心の奥で、うっすら期待した敗北は訪れなかった。
ようやく緊張を解きいた彼女の頭頂部から、空中に浮かび
視界の外で機会を伺っていた転移魔法陣がストンと落ち、
首の根元の位置で静止する。
いまだ転移の効果は発動しておらず、胴体は自由になる。
魔人は確かに粉微塵に砕かれている。
何が起きたのか理解できないという風に目を見開き、
首の廻りで浮遊する魔法陣を、何とか外そうと手を伸ばす。
しかし魔法で形成された光のリングに過ぎない魔法陣を
物理的に触れる事など出来ない。
身体を曲げて首を抜き去ろうとしても、身体の動きに連動するように
魔法陣は首から離れる事はない。
そうこうする間に、眼の前で粉になった魔人の残骸が蠢くように
1点に向かって集合しパズルを組み立てるように、1ピーズごと、
パチンパチンと組み上がり、人間の形状へと、ゆっくり再生し始めていた。
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