久しぶりに耳にした遥の関西弁…初めて話をした時から妙に心地よく、飾り気がなく本音をそのまま言葉にしたように感じたものだ。
高校生になっても殆ど化粧っ気のない遥にとても合っていると思う。
「ごめんね…急に転勤が決まってバタバタしてたから…それに遥ちゃんも中学生になって学校とこ部活とか忙しいって美香から聞いていたから…それにしても…ホント遥ちゃん綺麗になったね…真っ黒に日焼けして美香たちと遊んでたあの頃とは大違いだ…(笑)」
立ち止まって話しをしていた2人は、どちらともなく歩き出した。
「そうか…野球部のマネージャーか…たいへんそうだね…遥ちゃん、野球好きだったし面倒見が良い遥ちゃんにピッタリだね…」
遥と話をしていると様々なことが頭に浮かぶ…まるで昨日のことのように鮮やかに…
急にしんみりとした顔になった進一…遥はそれに気づき心配そうな目を向けた。
「あっ…い、いや…なんでもないんた…色々と思い出しちゃってね…」
1人先に北海道へ出向いた進一…半年後に妻と美香を赴任先に呼んだ。
不慣れな土地で知り合いもなく、仕事が忙しく放ったらかしにしていた妻がパート先て知り合った男と浮気をし、それが原因で離婚…娘の美香とももう1年以上会っていない…
遥と話すうちに幸せだったあの頃を思い出してしまったのだ。
だが、そんなことを久しぶりに会った遥に言うこともないと進一は誤魔化した。
遥がチラリと腕時計に目をやる…おそらく何か用事があるのだろう…
「引き留めてしまって…また会えるかもしれないね…あっ…今度、試合の応援に行くから…」
角を曲がる時、遥は大きく手を振った…進一も手を振り返す。
遥の姿が見えなくなって、進一は大きくため息をついた。
遥との再会は嬉しく思う…忘れかけていたいい思い出が鮮やかに蘇ると同時に別れた妻への怒りなどの様々な感情がこみ上げていた。
妻と知り合ったのは、ちょうど妻が遥くらいの高校生の時…
やはり部活のマネージャーをしており、OBとして顔を出した時だった。
何に対しても一生懸命で、傍から見ていても感心してしまうほど…そんな妻に進一から交際を申し込み結婚した。
遥とは顔もまるで違うし、活発な遥とは正反対だが、根っこにある気持ちというか纏っている雰囲気がよく似ている気がする…遥と別れた妻が重なってしまうのだ。
(遥ちゃんもアイツみたいに…いや…そんなことはないか…もう忘れよう…アイツのことは…)
進一は、何か振り払うように頭を振り自宅に戻った。
新築建売だった家も妻が北海道に来て誰も住まなくなって3年半…こうも荒れてしまうかと思うほどだ。
本社に戻ったのをキッカケに貯まりに貯まった有給をまとめて取ったのも、家の手入れのためだ。
必要な物の買い出し、息抜きの散歩…わざと遥の帰宅時間に合わせ家を出る…そのおかげで何度か遥に会うことができた…
おはようございます。
よろしくお願いします。
予め言っておきますが、基本的に置きになってしまうと思います。
レスできない日もあるかと思いますが、気長にお付き合いください。
また何かあれば、遠慮なく言ってくださいね。
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