憑依した私にとって、その肉体を操るどころか言葉までも操り、心の内に思い描いている思考までも読み取る事ができた
憑依されてしまった瞬間から、貴女は私にとっては丸裸も同然
こうしてベランダで全裸に剥いて自慰行為に導いた今も、憑依された者は憑依した者の意のままに操られる他に術などなかった
(ほほぅ…。見られたいのか…。ベランダで全裸を晒して…それでも満ち足りなくて…オナニー姿まで見られたいと…?)
忙しなく蠢く指先は更に激しさを増していた
はしたなく漏れ出る水音に、甘く切ない吐息までもが纏わりつき淫らな響きとなって辺りに響いている
その音を掻き消す街の喧騒と若い男の会話の声
≪もう俺から逃れる事などできないとわかっただろう…?激しく動かされる指先に翻弄されたように快楽が追いかけてくるだろう…?
もう…そんなに漏らしてしまうほどに濡らしているお前の心の内を代弁してやろうか…?
見られたいんだろう…?本当は…今のお前の淫らな行為に気づいて欲しいんだろう…?≫
貴女の心の中を自在に見通す霊の声が頭の中に響き渡る
未来すら見ることができる霊に憑依されては自分に逃げ場など無いと意識の中に植えつけていく
≪教えてやろう…もうすぐあの男の通話は終わる…それと同時に街の喧騒も一瞬静かになる…。
その時…お前が声を出すか出さないか…お前に決めさせてやろう…と言いたいところだが…。
それでは声を上げる事はできないだろう…。
俺が声を…言葉を操ってやろう…。見て欲しいと…気づいて欲しいと…言わせてやろう…。
ベランダで全裸オナニーしてイクところを見て欲しいと…言わせてやろう…。≫
と、操られていると思い込ませる言葉を吹き込んではみたが、実際その時には貴女の意思に任せようと考えていた
遅かれ早かれ、いずれは他人に恥態を晒す事になる
それが今でも今でなくても構わないと考えていた
目の前にいる男がこの街の者ではない事はわかっていた
住宅街を抜けた先にあるホテルに宿泊する為に歩いているビジネスマン
仮に見られたとしても、この街で噂になることは無いと言うこともわかっていた
故に、余裕を持ちながら貴女を追い込む事ができる
そんな考えを廻らせていた時…その瞬間は訪れる
男が通話を終え耳から携帯を離した瞬間、街に漂っていた喧騒も一瞬の静寂に沈み込んでいく…
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