私の姿を見つけたヨシコが、打ち合わせ通りに私と春江の所へ走ってくる。
「春江さん、この方はお客様では無いのよ。
ウチの宿には大切な人で小鳥遊さん、という方なの。
小鳥遊さん、実は女将さんと旦那さんに不幸があって。
今はこの春江さんと春江さんの旦那さんが跡を継いでこの温泉宿を経営しているんですよ。」
ヨシコの言葉に目を見開き驚いて、
「おや、そうだったのかい。
お二人とも良い人だったのに。
では例の話はこれからはこの新女将に話せばいいのかい?
改めまして、私は小鳥遊 優太、といいます。
女将さん、これからお時間ありますか?
経営の事について、ちょっとお話があるのですが。」
ヨシコが春江にソッと耳打ちする。
「春江さん、この方はこの温泉宿の経営資金を貸してもらっている小鳥遊さんです。
怒らせて手を引かれてはウチの宿は潰れてしまいますのでくれぐれも粗相のないようにお願い致します。
先代の女将も身体を張って頑張っていたんですからね。」
深刻な顔で最後に意味深な言葉を発するヨシコ。
(さて、これから先の話は私と春江の二人きりで進めないとな。
アイツは上手く旦那の足を止めているようだな。)
旦那の方を見ると、例の仲居がベッタリくっついて上手く足止めをしている。
(ここまではシナリオ通りだな)
と内心ほくそ笑む。
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