(契約書を暗唱した話の続き)
「律儀に土下座で挨拶できるなんて、素晴らしい。さすが教師だ」
ご主人様にこう言われただけで、例え用のない高揚感と、嬉しさが込み上がってきます。ご主人様のお言葉の一つひとつが私の心をくすぐるのです。
「では、契約を成立させる。契約書に署名捺印しなさい」
もう、後戻りはできない。捺印してしまうと、本当に契約完了となってしまいます。でも、私に捺印する手を止めることはできませんでした。
私とご主人様用の2枚の契約書に私は署名と捺印をしました。
これで、私は人間ではなくなったのです。
これからは、1人の人間に仕える奴隷という身分として生きていくことが決定したのです。
「薫は、これから時間をかけて人間としての心を失っていく。同時に奴隷としての心がどんどん芽生えてくるようになるからね」
「はい、ご主人様の奴隷になれて嬉しいです。粗相のないように努力してまいります」
普段、職場でもあまり使わないような言葉遣いが平気で私の口から飛び出してきます。でも、もう何も考えずに、ただ身を任せて奴隷に堕ちていくことだけ考えていればいいのです。これまでは真子の子育てや自分のキャリアのことで精一杯で、他のことを考える余裕なんて全くありませんでした。キャリアに関しては、今も教職という立場ではいますが、これに関しても、ご主人様のお考えが全てです。辞めるように指示された場合は、それを実行しなければなりません。ですが、もうどうでも良くなっていました。
契約を結び、ご主人様の奴隷になれたことにこの上ない高揚感と、興奮と、学生の頃にした甘酸っぱい恋の感覚のようなもので私の体が満たされているのですから。
こんな感覚は、もう二度と感じることができないと思っていたのに、こうやって再び感じることができたのですから。
「では、目隠しを外してコートを着なさい」
えっ、、?ご調教は、、?
私の頭は、この後ご主人様のご調教でいっぱいでした。
「さっき言ったよね。今日は薫が家畜奴隷に適しているかどうかを見極める。俗にいう調教は今日は行わないと」
私はハッとしました。頭の中でご主人様のお言葉が反芻されます。
部屋に入る時の「調教は行わない。精神的に服従することが先だ」というお言葉が。
「申し訳ありませんでした、、」
私はコートを着ました。もちろん、コートの中は卑猥な形をしたランジェリーのままです。
「今日はこれで帰宅しなさい。でも、これからは常にメールやLINEで会話を続ける。離れていても、私は薫を見ているからね」
ご主人様と会っていなくても、常にご主人様を感じていられる。それがとてつもなく嬉しかったのです。
(続く)
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