(ご主人様によるご調教が始まる話の続き)
首輪をキツく装着された私に、ご主人様はリードも付けました。
完全に犬の散歩に行く時の状態です。昔、犬を飼っていたのでその時の情景が頭をよぎります。飼い主と飼い犬の関係です。
でも、今は人間のご主人様とペットの私。
犬に対して上からの立場で散歩を行っていた頃を思い出してしまい、今の私の立場、身分がいかに成り下がってしまったものなのかを改めて実感させられます。
ご主人様がリードを引きます。それに伴ってリードがピンと張り、首輪をグイっと引っ張ります。それと同時に私の首も引っ張られ、四つん這いで歩くという行動が始まりました。私が犬になった瞬間です。
ご主人様の引くリードによって四つん這いで歩かされる私は、どこへ向かっているのか全くわかりません。
ご主人様の引く方向についていくことしかできません。向かう方向も自分で決めることができず、身分の高い人によって導かれることに身を任せるしかありません。
「今から薫は何をされるか把握しているのか?」
突然のご主人様のお言葉に、思わず体がビクッとしてしまいます。
「ご主人様に、ペットとして扱われます、、」
「それは前提だ。ペットとして、どのように扱われるのを把握しているのか、と聞いているんだよ」
私の考えが浅はかでした。
やはり、この方には逆らえない、逆らってはいけない、そう実感させられました。
鞭を打たれたり、縄で縛られたりすることで、そのことをより一層実感させられるのだろうと、目隠しの下で妄想してしまっていました。
でも、ご主人様の問いに対して、明確な答えを出すことができません。
顔をキョロキョロしていると、
「今日は薫に、ペットとして、家畜奴隷としてのふさわしい適正を持っているかの確認をする。だからといって、鞭を使ったり、縛ったりと、俗にいう調教というものはしない。まず精神的に薫が私に服従しないと意味がない」
私の考えはやはり浅はかでした。
ご調教というと、縄で縛られ、鞭を打たれることを想像していたからです。
「目隠しを取りなさい」
えっ、目隠しを取ってもいいの、、?と不思議でした。しかし、目隠しを外した私の視界に入ってきたものは、これからの私の運命を決めるとても重要な書類でした。
「契約書だ。薫が私に誓う『家畜奴隷契約書』だ。今から薫にはこれを暗記してもらう。その後に再び目隠しをして、全ての文章を暗唱して誓ってもらう」
契約書、、マンションの部屋を借りる際に賃貸契約書などで聞いたことのある言葉です。
それを、人間に対して使うなんて、、
しかも、契約書は一度結ぶと原則的に取り消すことはできません。
それを、今ここで暗記し、それを暗唱して、家畜奴隷として服従することを強制的に誓う。家に帰ってゆっくり考えることはできません。誰かと相談して契約することもできません。
今ここで結ばないといけないのです。
ですが、私を満たしているのは、ゆっくり考えることや誰かに相談するといった、マイナスなものではありませんでした。
他人に支配される、自分の行動を自分でコントロールすることを許されず、他人のご命令によってしかできないという、言葉にするのが難しい、むず痒い感覚が私を満たしていました。
(続く)
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